【フィギュア】NHK杯連覇の坂本花織 ジャンプ至上主義に〝逆行〟したVの価値

スケーティングの「質」で他を圧倒した坂本(東スポWeb)

意味のある「1勝」だ。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦のNHK杯(東京・代々木第1体育館)の女子シングルは坂本花織(21=シスメックス)が2連覇を達成。全日本女王の紀平梨花(トヨタ自動車)、昨季の世界選手権銅メダルのアレクサンドラ・トルソワ(ロシア)らのV候補が欠場する中、しっかりと存在感を示した。

快挙から一夜明けた14日、坂本は「正直、去年はほぼ日本人だけだったので、あまりグランプリという感じがしなかったけど、今回は本当にグランプリで優勝した実感があった。自分で君が代を流したのがうれしくて、じわーってきた」と満足げに話したが、本当の価値は演技構成に隠されている。

現在、ロシア勢を筆頭に多くの女子トップ選手はトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)や4回転ジャンプをプログラムに組み込む。しかし、坂本のフリーは4回転はおろか3回転半すらない。その分、クオリティーの高さを追及して出来映え点(GOE)や演技構成点で稼ぎ、さらに基礎点が1・1倍になる後半に3回転連続ジャンプを入れる作戦に出た。

あえて〝ジャンプ至上主義〟に逆行。その真意について、坂本は「ちゃんとクリーンに降りないと本当に点数が下がる」と話した。実際に採点表を見ると、基礎点はフリーで2、3位の選手より低いが、演技構成点とGOEで大きく突き放した。無理なジャンプを控えて、スケーティングの「質」で他を圧倒した形だ。

また、坂本は大技を控えた理由として「ケガをするリスクがすごく大きい。どうしても今年は安定した演技をしたかったので」と話す。前述の紀平、トルソワをはじめ、今大会はV候補のダリア・ウサチョワ(ロシア)も練習中にケガをして棄権。ジャンプの進化が加速し、ケガ人が続出している背景を考えると、坂本の選択は一定の方向性を見出したと言えるだろう。

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