野球の力で生み出した地域のつながり 閉校利活用で作った室内練習場から広がる輪

10月31日に完成した「PLAYSPACE YOZEI」の様子【写真提供:PLAYSPACE YOZEI】

大人たちが込めた野球少年・少女に伝えたいメッセージ

野球用の室内練習場が地域のつながりを生み出している。鹿児島県薩摩川内市で、閉校になった小学校を活用した室内練習場が10月31日に完成した。動画にも収められているように地元の人たちの協力なくして、環境は整わない。大人から野球少年・少女に届けたい感動メッセージがあった。

サポートの輪が、どんどん広がっていった。子どもたちの未来や、野球への期待の証。1つの施設をきっかけに人と人とが出会い、つながっていく。10月31日、鹿児島県薩摩川内市で室内練習場「PLAYSPACE YOZEI」がオープンした。

野球用の室内練習場は、2018年3月に閉校になった小学校の体育館を活用した。子どもたちの元気な声が体育館に戻った。薩摩川内市で生まれ育ち、施設を設計した株式会社FRONT-A代表取締役社長・福永幸央さんは「地域の方は閉校で子どもたちがいなくなって寂しく感じていましたが、地元の子たちが野球の練習に来ることを喜んでいます。施設ができたことを歓迎してもらえているのかな」と笑顔で語る。建物周辺の草刈りをしてくださったり、お菓子の差し入れや写真撮影に来たりする人もいるという。

この室内練習場は地元の多くの人の手によって完成し、野球少年・少女への思いが込められている。体育館を野球の練習場に改修するため、床を解体して土やコンクリートを敷き詰め、人工芝を整備する必要があった。コンクリートを入れる作業に加わったのが、近くにある「れいめい高校」工学部の生徒。土木会社主体で作る団体と連携し、授業の一環で、練習場の土台をつくった。

応援している大人がスポーツをする子どもの心を育てる

また、室内練習場で使用できるバットも「鹿児島産」にこだわった。鹿児島県は全国1位の竹林面積を有し、中でも薩摩川内市は県内2位となっている。地元の誇りである一方、高齢化や担い手不足により、里山の環境を悪化させる放置竹林が課題となっている。そこで、福永さんは「竹バット」への活用を考えた。子どもたちには、地元の素材を使った野球用品を知ってもらうだけでなく、地元が抱える課題にも目を向けてもらいたいと考えている。

「応援してくれる方、協力してくれる方が、こんなにもたくさんいるんだと感じました。室内練習場を通じて地域のつながりができました。スポーツで地域を活性化したいですね」と福永さん。雨の日でも練習できる施設に、エコボールや竹バット。野球を楽しむ子どもたちは忘れてはならない。そこには、大人たちの思いやメッセージが詰まっていることを。(間淳 / Jun Aida)

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