大谷選手MVP

 米大リーグの「野球の神様」、ベーブ・ルースはレッドソックス時代、1シーズンで投手として20勝以上を挙げて大活躍した。やがてヤンキースに移ると、今度は50本を超える本塁打を放ち続けた▲投打の二刀流で鳴らした神様だが「投」から「打」へと軸足は変わったらしい。その100年後、同じ二刀流の人は今季の前、所属するエンゼルスの監督に申し出たという。「投げる、打つの同時出場を試したい」▲メジャー3年目の昨季は打率1割台、投げて0勝。二刀流で通すか、引くか。瀬戸際にいた大谷翔平選手は、1試合で投打をこなす「リアル二刀流」で花を咲かせ、リーグの最優秀選手(MVP)に選ばれた▲下半身を鍛える、バットを振り上げて打球に角度をつける、投球フォームを変える。いくつも改善したというが、今年初めの言葉がとりわけ胸に残る。「何がいいか悪いか、試して反省して、試して反省して…。繰り返してだんだん良くなる」▲もっとうまくなりたい。どんな座右の銘よりも、広大な夢よりも、努力の人を突き動かしてきた思いかもしれない▲小学生の頃の野球日記には「わるかったこと 全力で走れていなかった」「よかったこと 声がいつもよりだせていた」と毎日つづったという。大谷少年がいて、今の「異次元」の人がある。(徹)

© 株式会社長崎新聞社