中国の元副首相に性的暴行を受けたと告発して行方不明になっていた同国の有名女子テニス選手・彭帥さん(35)について、国際オリンピック委員会(IOC)は21日、トーマス・バッハ会長が同選手とビデオ電話し、「北京の自宅で安全かつ元気にしている」として本人の無事を確認したと発表。だが、このお膳立てされたリモート面会だけでは中国当局への疑念は払拭できないとするテニス界の懸念を米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。
ビデオ電話には李玲蔚IOC委員(中国)とエマ・テルホ選手委員長(フィンランド)も参加し、彭さんには英語が堪能な友人が同席。IOCによると、彭さんは自身の安全を強調した上で、「今はプライバシーを尊重してほしい、と彼女は説明した」。
また、来年2月の北京五輪を前に、バッハ氏は1月に現地入りする予定で、その時は食事に招待したいと提案すると彭さんは快諾したことも明かした。
ダブルス元世界1位に輝いたスター選手である彭さんは今月2日、不倫関係にあった張高麗元副首相から性的暴行を受けたとする文章を短文投稿サイトに投稿。すると、その後、消息不明になった。
これを深刻な問題をして取り上げ、追及しているのが女子プロテニス協会(WTA)のスティーブ・サイモン会長だ。同紙によると、サイモン氏はここ1週間以上、彭さんと連絡を取るよう努めたが実現せず、同選手を監視している可能性が高いとみられる中国当局への批判を繰り広げてきた。
今回、IOCがビデオ電話の内容を公開したことにサイモン氏は談話を発表。「彭帥さんの姿を映像で確認できたことはよかった。しかし、これだけでは彼女の安全や他人から監視されたり、強要されることなく発言できるのかというWTAの懸念を払拭することはできない」とし、「性的暴行という告発に対する完全で公正な開かれた調査を求める」とするWTAの訴えは何ら変わらないと付け加えた。
タイムズ紙によると、サイモン氏は「中国政府が彭さんの行動の自由を保障し、告発内容について自由な発言を許可しない限り、WTAは中国でトーナメントは行わない」と断言しているという。