【日本S】オリックス吉田正、まさかの連続三振から復調した訳 専門家が唸る「さすがの技術力」

オリックス・吉田正尚【写真:荒川祐史】

レギュラーシーズンで1試合2三振は3度、2打席連続は1度だけ

■ヤクルト 5ー4 オリックス(日本シリーズ・23日・東京ドーム)

「SMBC日本シリーズ2021」は23日、東京ドームで第3戦が行われ、オリックスは4-5で惜敗。対戦成績を1勝2敗としたが、まだまだどっちに転ぶか分からない。光明だったのは2年連続首位打者の吉田正尚外野手が本来の打棒を取り戻したことだ。7回には一時、勝ち越しとなる適時二塁打を放つなど、2本の二塁打で4打数2安打1打点。パワフルな打撃は相手にとって最大の脅威だ。

第1、第2打席は苦しんだ。ヤクルト先発の小川に対し、初回にはチェンジアップ、3回にはフォークでタイミングを外され、いずれも空振り三振。吉田尚といえば、昨季は29三振、今季は26三振で、2年連続で12球団の規定打席をクリアした打者の中で最少(昨季はDeNA宮崎とタイ)。球界随一の“三振しない男”である。今季、レギュラーシーズンでの1試合2三振は3度、2打席連続三振となると、8月31日の日本ハム戦(札幌ドーム)で上沢に喫した1度だけだったのだから、極めてレアだ。

現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、「どんな凄い打者にも、この投手のこの球種にはどうしてもタイミングが合わない、というものがある。吉田正にとってはそれが小川の落ちる球なのでしょう」と言う。

第1戦では、9回に中越えのサヨナラ打を放ったが、5打席でヒットはこの1本だけ。第2戦は4打数無安打で、本調子には見えなかった。

7回には左腕・田口から勝ち越し二塁打

しかし、やられっ放しでは終わらない。2点を追う6回、先頭で第3打席に入ると、スライダー、ストレート、スライダーを見送りカウント2-1。4球目に外角高めに浮いた小川のストレートを一閃すると、打球は左中間を抜ける二塁打となった。ヤクルトバッテリーはなぜ落ちる球を使わなかったのか。

野口氏は「追い込んでからウイニングショットにするつもりだったのでしょうが、結果的に出し惜しみが裏目に出た。これだけの打者ですから、打たれるまで落ちる球で攻めてもよかった。逆に言えば、第2打席までの残像が残る中、ストレートのタイミングで振っていった吉田尚の割り切りが功を奏しました」と指摘する。この一撃は、続く杉本の同点2ランを呼び込んだ。

そして続く7回。2死一、二塁の好機に、ヤクルト3番手の左腕・田口から、外角低めいっぱいのスライダーを左翼線へはじき返し、勝ち越しのタイムリー二塁打。野口氏は「田口を責めることはできない。タイミング自体は外れていました。それでも打球をあそこへ運んだ吉田正の、技術力の高さを褒めるしかない」とうなった。試合は結局、ヤクルト・サンタナに逆転2ランを浴び敗れたが、吉田正の打棒は大きな爪痕を残した。

シーズン最終盤の10月2日・ソフトバンク戦で死球を受け、右手尺骨を骨折し戦線を離脱。強行復帰したCSファイナルステージと日本シリーズ第1、第2戦は、指名打者で出場していた。指名打者制のない敵地とあって、この日は復帰後初の左翼守備に就いたが、不安の残る中で本来の実力を発揮。いよいよこの男が日本シリーズの主役に躍り出るかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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