ヤクルトが日本一王手!伊勢孝夫氏は〝ナゼか打たれない〟石川の41歳投球術を称賛

ベテランの妙技でオリックス打線を翻ろうした石川(東スポWeb)

【新IDアナライザー 伊勢孝夫】ベテランの妙技が光った。日本シリーズ第4戦(24日=東京ドーム)で先発マウンドに立ったヤクルトの41歳左腕・石川は素晴らしい投球だった。6回を77球、3安打1失点。プロ20年の円熟味を存分に見せつけながらオリックス打線をキリキリ舞いにさせ、チームを日本一王手へと導くとともに自身も日本シリーズ史上2番目となる年長勝利投手となった。

私もヤクルトでコーチを務めていた時代、長きにわたって石川を傍で見ていた。彼はこれまでのパターンとして立ち上がりで失点しなければ6回あたりで捕まってしまうことが多い。逆に2回までに点を与えると、その後は上り調子になってスイスイと気持ちよく長いイニングを投げる。ところが、この日はどちらかと言えば前者に近い内容だったとはいえ想像していた以上の結果を残した。ベンチの高津監督もおそらく〝うれしい誤算〟だったに違いない。くだんの6回に二死から初めて連打を浴び、味方の守備の乱れも絡んで同点とされたものの最少失点でクリア。こういう大舞台で最高の投球を見せられるのだから、やはり石川という男は大したものだ。

今日はいつにも増して制球が良かったことに尽きる。パワーピッチャーが全盛となっている現代野球において、制球力で勝負する石川のような存在は稀有だ。一方、パ・リーグにはいないタイプだけに対峙したオリックス打線は「打てそうだけどナゼか打てない」という石川の投球術に終始面食らっていた。おそらく決め球や勝負どころにスクリューボールやサークルチェンジを組み込む印象が強いとみていたはずだろう。だが、ふたを開けてみると追い込んでからインサイドの真っすぐで勝負するシーンも多々あり、意表を突かれる強気の攻めによって最後まで結局対応できなかった。象徴的な場面は3回先頭の若月が3球で追い込まれ、この日最速となる136キロの内角直球に全く手が出せず見逃し三振を奪われたところだろう。

やはり、その観点から考えると石川の持ち味を存分に引き出した正妻・中村の配球も称賛されなければいけない。

(本紙評論家)

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