「ヤマノススメ」などを手がけたアニメ制作会社・株式会社エイトビット(東京都杉並区)が新潟市へ新スタジオを開設

株式会社エイトビットの須山博一代表取締役CEO(写真左)と制作グループの金子真枝プロデューサー(写真右)

TVアニメ「ヤマノススメ」などの作品を手がけたアニメ制作会社、株式会社エイトビット(東京都杉並区)が、新潟市中央区へ新たにスタジオを開設したことに伴い、同社の須山博一代表取締役CEOと制作グループの金子真枝プロデューサーが25日、新潟県の佐久間豊副知事と新潟市の高橋建造副市長を表敬訪問した。

新潟スタジオでは、本社と同様にアニメーション制作の中核となる業務を担い、今後5年間で計15人ほどの採用を目指す。

エイトビットは2008年9月創業のアニメ制作会社で、「ヤマノススメ」「転生したらスライムだった件」「魔法科高校の劣等生」などのシリーズを制作しているほか、EC事業を立ち上げ、アニメ作品の設定資料集やグッズなどの販売も行っている。

同社では多様な働き方を実現する取り組みとして、2019年6月からテレワークでのアニメ制作を試験的に開始し、2020年4月からその取り組みを本格化。またコロナ禍の影響から、現在も在宅勤務を続けるアニメーターもいるなど、社外・遠隔での就業環境を構築してきた。

左から、新潟市の高橋建造副市長、エイトビットの須山博一代表取締役CEO、金子真枝プロデューサー、新潟県の佐久間豊副知事

一方で、須山CEOは「徒弟制ではないが、アニメーターは先輩からの指導や、机を並べて作業することも技術習得の上で重要となるなめ、テレワークには限界があり、会社も東京にあるだけでは足りない」と、地方拠点の必要性も語る。

新潟を選定した決めての1つには、人口やアニメーション系専門学校の多いことがあるという。また、これまでにも数人の新潟在住のアニメーターとの関わりがあったことから、「新潟に拠点を構えることで、そうした地元アニメーターや若手が集まるハブとなり、社員が成長できるきっかけになると思った」と須山CEOは話す。

同時に「アニメ・マンガに関するイベント『がたふぇす』が開催されていることや、著名なアニメーターや漫画家が昔から多く輩出されていることから、新潟にはマンガ・アニメ文化の地盤がある」(須山CEO)点も評価する。なお、同社の地方進出は初となる。

進出報告の様子

11月に開設した新潟スタジオはバックオフィス的な存在ではなく、作画やキャラクターデザインなどアニメーション制作の中核となる業務を遂行していく。新幹線による首都圏との物理的なアクセス性のほか、「東京(本社)とオンラインで繋がっているので、オンタイムでやりとりができる」(金子プロデューサー)ことで、本社と共に仕事ができる環境を目指す。

2023年4月の新卒採用から本格的に受け入れを開始し、年2人から3人ほどの人材を採用。5年で計15人ほどの体制を構築していく計画で、須山CEOは人材教育について「一線級のアニメーターになれる環境を作るために、少人数へしっかり丁寧に教育していきたい」と話した。

進出報告で佐久間副知事は「近年、新潟に来たIT企業が、新潟の良さを口コミで同業者へ広め、次の企業進出へつながることがある」と話し、アニメ業界にも同様の効果が生まれることに期待を寄せる。

新潟県内はアニメーションやマンガ・イラスト、あるいはゲーム制作に関する専門学校が地方都市としては比較的豊富にあるものの、県内では就職先が限られていることから、首都圏への流出や異業種への就職を余儀なくされる点が課題の1つとなっていた。今回の進出を契機として、新潟のマンガ・アニメ文化が作り手側の面でも発展していくことに期待したい。

新潟県の佐久間豊副知事(写真左)と、新潟市の高橋建造副市長(写真右)

金子真枝プロデューサー(写真左)と、須山博一代表取締役CEO(写真右)

近年は県内企業もアニメの「コラボグッズ」に意欲的であり、ふるさと納税の返礼品に採用する自治体もあるなど展開は広い。エイトビットでも、今後は県内企業とのコラボをより積極的に展開していきたいという

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