【中医協総会】「調剤料に対人業務含まれる」/適切な評価のあり方議論に

【2021.11.26配信】厚生労働省は11月26日に中央社会保険医療協議会総会を開き、調剤報酬の配分のあり方に関して議論した。その中で、これまで対物業務の筆頭に挙げられてきた「調剤料」に関して、一定の「対人業務」が含まれているとの考え方が示された。委員からも一定の理解を示す声が聞かれた。今後、調剤料に含まれる対人業務をどのように評価するのか、注目される。

薬剤師会・有澤氏「調剤料の加算などの検討を」

同日の中医協で、事務局は「調剤料」「調剤基本料」のほか、「その他」として同一薬局の利用推進や在宅患者訪問薬剤管理指導料などのテーマを示した。

事務局の説明後に意見表明の口火を切ったのは、日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏だ。
有澤氏はまず、対人業務へのシフトは大きな方向であるとの前提を示した。「対物、対人というキーワードがよく出てくるようになったが、これは厚労省の患者のための薬局ビジョンに示されたもので、薬剤師は認識をともにしており、今後の薬局・薬剤師のあり方を示したものだ。処方箋を正確に調剤する業務から、患者・人を中心した考え方に変化しており、対物から対人への構造転換だと理解している。このことを議論の出発点として、中医協の委員の皆様と共有したい」と述べた。
その上で、調剤料の現状に対し問題意識を表明。「調剤料はモノだけの評価ではないことをはっきり申し上げたい」とした。事務局が資料でも示した通り、「患者情報等の分析・評価」「処方内容の薬学的分析」、「調剤設計」など、調剤料には対人業務が含まれているとの考えを示した。「対物と対人の両方があって調剤が成り立つ」として、調剤業務の実態に理解を求めた。
調剤料のあり方については、「対人の線引きができるものではない」とし、調剤料の構成比率が高いことをもって対物業務の比率が高いと判断する見方については否定的な見方を示した。
今後の議論については、「複合的な業務ではあるが、評価の内容で整理できるものは整理して、調剤料の加算も含めて検討を」と述べた。ただし、調剤料の変動は薬局経営への影響が大きいとして、「評価の影響を見つつ、累次の改定で段階的に行うことを強く要望する」と慎重さを求めた。

医師会・城守氏「調剤料のうち、薬学管理料で評価されるべきものを検討を」

調剤料に関して日本医師会常任理事の城守国斗氏は、「薬局の調剤業務の流れにしたがって考える必要があるが、もう少し整理した方が分かりやすい報酬体系になるのではないか」とした。具体的には品質管理など明確にモノとしての業務については調剤料として評価されるべきである一方、「薬剤師さんが個々の患者さんのために治療効果の最大化やリスクの最小化をする業務については、薬学的知識を必要とするもの」との考えを示した。
事務局が調剤の流れとして示し、現在は調剤料の評価に含まれている「患者情報等の分析・評価」や「処方内容の薬学的分析」「調剤設計」などについては、「薬学管理料として見直される場合があるか検討されるとよいと思う」と指摘した。
ただし、「日数に応じて評価が変動することは医療機関になじまない」として見直しを求めた。一包化加算についても「機械で自動化されている中で43日以上から評価が分かれているが、精査は必要」と述べた。

日本労働組合総連合会総合政策推進局長の佐保昌一氏は、調剤料に関して「対人業務を適切に評価することが重要であり、調剤料の評価と薬学管理料などのバランスを考え見直して行く必要があるのではないか」と述べた。

日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理の眞田享氏は、調剤料に関して、「技術料に占める調剤料の割合について減少するトレンドは今後も継続させていくことが重要ではないか」とした。

健康保険組合連合会理事の松本真人氏は調剤料に関して、「投与日数が増えると点数が増加する仕組みは問題だと以前から指摘している。いまだに1週間ごとに点数が階段状で増えていくという仕組みはそのままだ。1週間分と2週間分で調剤業務が本当に増えるのかという疑問は私も抱いている。今回、調剤料の中に対人業務的な要素を含むということは初めて明示された。調剤業務の考え方と報酬についてはもう少し議論する必要があると思っている」と話した。

<編集部コメント>調剤料の議論は両刃の剣

周知の通り、調剤料は調剤報酬のうち薬剤料を除いた技術料で5割を占めており、調剤料の行方は薬局経営に大きな影響をもたらす。
「対物業務から対人業務へのシフト」がうたわれる中で、一律に調剤料の比率減少をよしとする議論の方向性に薬剤師会は強い危機感を抱いてきたといえる。

前回、この議論に強い口調で反論した健保連だが、幸野氏から松本氏に委員が変わり、松本氏は「もう少し議論が必要」と述べ、「調剤料の中に含まれる対人業務の評価の議論」自体には強い抵抗は示さなかったといえる。ただ、適切な評価のあり方に理解を示しただけで、投与日数で調剤報酬が増加することへの問題意識は変わっていない。そのため、この議論を契機に、日数に比例する報酬のあり方に切り込まれると、それはそれで薬剤師会にとっては厳しい議論となるだろう。

薬剤師会の有澤氏が牽制した通り、段階的な移行が望ましいといえる。

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