日本の頼れる主将・吉田の原点は12年ロンドン五輪直前「パッキントンの夜」

吉田麻也(東スポWeb)

【取材の裏側 現場ノート】7大会連続のW杯出場を目指す森保ジャパンで強力なリーダーシップを発揮してチームをけん引しているのが主将を務めるDF吉田麻也(33=サンプドリア)だ。

2018年ロシアW杯後に長年主将を務めてきたMF長谷部誠(Eフランクフルト)からバトンを受け、森保ジャパンで正式に主将に就任した。森保一監督や周囲の選手たちからの信頼は絶大で、今夏の東京五輪でもU―24日本代表にオーバーエージ(OA)枠で招集されて主将を務め、4強進出に貢献した。

いまや押しも押されぬ日本の頼れる主将の地位を確立した吉田。その原点は2012年に開催されたロンドン五輪にある。

この大会にもOAで参加した吉田はチーム合流後に強化試合でキャプテンマークを付けるなど主将の就任が既定路線ではあったものの、当時の関塚隆監督は大会の開幕が迫っても明言していなかった。

そうして迎えたスペインとの開幕戦の1週間前、直前合宿地パッキントンを離れる前に関塚監督はイレブンに「みんなで話してみろ」と選手ミーティングの開催を提案。夕食後に宿舎で行うことになり、吉田は自ら仕切り役を買って出た。

そこで吉田は主将としての素質を発揮する。後に吉田に聞くと「あそこで僕は自分の言いたいことを全部言った」と振り返ったように熱弁を振るった。「北京(五輪)のこととか、僕の意見とか。このチームはベンチでおとなしい選手が多い。もっともっと盛り上げていくことが大事になる。そういうことも」。自身の経験を踏まえて幅広い視点からチームの改善点をズバリと指摘する。

同僚を奮い立たせる言葉も忘れない。「外れた選手の分まで戦わないといけない!」。日本を代表して戦う心構えを説いた。その一方で決して独りよがりになることはなく「今まで引っ張ってきた選手が引き続きリーダーシップを取ってくれれば」とチームの和も重視し、他の選手の意見も積極的に引き出して活発な議論が展開された。

この〝パッキントンの夜〟でチームの士気は一気に高まり、関塚監督は正式に吉田を主将に任命。優勝候補のスペインを撃破する〝グラスゴーの奇跡〟、さらに44年ぶりの4強進出へとつながった。

初めて大役を担ったロンドン五輪から9年。吉田は日本代表の歴史に残る名キャプテンの道を歩んでいる。

(サッカー担当・渡辺卓幸)

© 株式会社東京スポーツ新聞社