時雨の季節に

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 今時分の雨だろう。「時雨(しぐれ)」とは晩秋から初冬にかけて降ったりやんだりする小雨のことで、曇りがちの空模様も指す。春の通り雨には「春時雨」という別の呼び名がある▲時雨の異名を「時知る雨」といい、「秋が終わり、冬の訪れを待つ雨」の意味らしい。時節をわきまえて降る雨には、どこか律義な「季節の使者」の風情がある▲時知る雨の頃だというのに、「時知れず」と言うべきか、先のことが読めず、落ち着かない心持ちの方も多いとお察しする。コロナ感染はこのところ列島全体で鎮まっているが、海外に目を移せば勢いがまたも止まらない▲ワクチンを2回接種した人は県内で76%を超えた。お隣の韓国も接種率は高いのに、経済活動の制限を緩めた矢先、感染者も重症者も急増している。高齢の人の接種後の感染が多く、ワクチン効果が薄れているとみられる▲65歳以上への3回目は、県内の早い市町で来年1月に始まる見通しという。今は感染が止まっていてひと安心、この先を思うと不安でもある…。空模様ならぬ人の心模様は一言で表しがたい。新種ウイルスの心配もある▲時雨の降りそうな空を「時雨心地(ごこち)」といい、涙がこぼれそうな気分も指すらしい。感染対策を念入りにして、心は涙雨や曇天よりも、穏やかに晴れた「冬日和」で過ごしたい。(徹)