人数制限緩和で球場が一変!〝コロナ前〟取り戻したようだった日本シリーズ

多くの観客が見守る中で力投する山本(東スポWeb)

【広瀬真徳 球界こぼれ話】熱戦に次ぐ熱戦だった日本シリーズがヤクルトの日本一で幕を閉じた。今年はヤクルト、オリックス両軍の力が拮抗。試合の行方がどちらに転ぶかまったく予想できなかったこともあり、例年以上に盛り上がった日本一決定戦だったと言える。

このシリーズの盛り上がり。接戦続きだったゲーム内容だけが要因ではない。人数制限が大幅に緩和された球場の雰囲気も後押ししたのではないか。

今季はレギュラーシーズン開幕時から新型コロナウイルス感染防止対策として球場への来場者数を制限。首都圏に本拠地がある球団は最大1万人、それ以外の地域でも定員の50%程度しかファンが入場できず、昨季同様どの球場も閑散とした空気が拭い切れなかった。

だが、公式戦終了後のCSから観客の人数制限が緩和されると球場の様相は一変した。ZOZOマリンスタジアムで行われたパ・リーグのCSファーストステージ(ロッテ―楽天)は上限が1万5000人になったこともあり、試合中の球場は公式戦と比べ明らかににぎわいを見せていた。

京セラドームで行われたCSファイナル(オリックス―ロッテ)にいたっては観客の上限数がさらに緩和され、第3戦は1万8006人のファンが来場。バックネット裏にある6階記者席から球場全体を見渡すと、まるでコロナ禍前の「日常的な光景」を取り戻したような錯覚に陥った。

東京ドームでの日本シリーズ第3戦以降は「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験もあり、観客はついに2万人を超えた。これだけファンが来場すれば拍手や手拍子などの限定的な応援でも球場内のムードは自然と高まる。こうした外的要因がグラウンド内でプレーする選手に刺激を与え、最高のパフォーマンスを引き出したとも考えられる。

実際、シリーズ第1戦でサヨナラ打を放ったオリックス・吉田正は「ファンの声援が感じられた」とスタンドからの応援の重要性を強調。シリーズ第2戦に先発した宮城も「(周囲からの)いろいろな声がすごく力になった」とファンの声援の重みを実感した様子だった。こうした発言を聞く限り、激戦に次ぐ激戦を重ねた今シリーズは球場に足を運んだ大勢のファンが作り出した産物と言っても過言ではないだろう。

野球観戦の醍醐味はやはり超満員の球場で手に汗握る試合を見届けること。今年のポストシーズンを取材して改めてそう痛感させられただけに、来季こそは…。開幕からスタンドを埋め尽くすファンの前で白熱した試合が繰り広げられることを願うばかりである。(隔週月曜掲載)

☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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