声上げて「人災」防げ 熱海・伊豆山土石流、小田原で遺族が講演

違法盛り土を行った関係者の刑事告発や民事訴訟に取り組む「被害者の会」の瀬下会長=小田原市内

 静岡県熱海市伊豆山の大規模土石流の教訓を訴えようと、被害者遺族の男性が5日夜、神奈川県小田原市内で行われた盛り土規制を考える市民らの集会で講演した。「声を上げなければ悪徳業者がはびこるばかり─」。母を失った悲しみから違法盛り土の業者関係者への刑事告訴、民事訴訟に踏み切った男性は事故を「人災」と断言。集会では小田原市内での盛り土の実態も報告され、市民らは法規制強化による再発防止を訴えた。

◆「人生を失った」

 講演したのは「熱海市盛り土流出事故被害者の会」会長の瀬下雄史さん。瀬下さんの両親が横浜市内から伊豆山に引っ越したのは約20年前。「伊豆山の岩盤は堅く、数百年災害もなかった。住民は伊豆山の安全性を信じて疑わなかった」。今回の土石流の起点となる土地で小田原市内の不動産管理会社(清算)が2007年から不法に盛り土を行ったが、多くの住民は盛り土の存在すら知らされていなかった。

 今年7月の豪雨による土石流で、瀬下さんの両親の自宅も倒壊。自宅にいた77歳の母の遺体が見つかったのは22日後。変わり果てた姿に呆然(ぼうぜん)とし、「思い出もこれまでの自分の人生そのものも失ってしまったような気がした」。

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