「声聞いてほしかった」 NPT会議に被爆者代表団の派遣断念

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、米ニューヨークの国連本部で5年ごとに開く核拡散防止条約(NPT)再検討会議に、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が被爆者代表団の派遣を断念した。長崎県内から渡航を予定していた被団協代表委員で、長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(81)は「米国と中国の緊張が高まっているので、被爆者の声を少しでも聞いてほしかった。残念だ」と話した。
 田中会長によると、当初予定の昨年4月に再検討会議が開かれれば、全国から30人ほど被爆者が渡航予定だった。田中会長は来年1月の会議について「コロナ禍で渡航は諦めていた」と複雑な心境を吐露。ニューヨークの1月の気温は0度以下になることもあり、「季節的にも(長時間の)飛行機の往復にも耐えられる体力がない」と話す。
 次の再検討会議は5年後。被爆者の平均年齢は90歳近くになる。田中会長は来年3月にオーストリアで開催予定の核兵器禁止条約の第1回締約国会議についても体力や資金面の不安を挙げ「私は行くつもりはない」と話した。


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