漁網を編み、人とつながる 五島・奈留で「そらあみ」プロジェクト進行中

思い思いのペースで漁網を編む住民ら。右上は五十嵐さん=五島市、泊集会所

 長崎県五島市奈留町で島民らが協力して漁網を編むアートプロジェクト「そらあみ」(県、同市など主催)が2年ぶりに進んでいる。縦5メートル、横15メートルの網を完成させ、23日から同町の江上天主堂前に展示する。コロナ禍の中、参加者は人と人とのつながりを確かめながら5色の糸を編んでいる。
 そらあみを主宰するのはアーティストの五十嵐靖晃さん(43)=千葉県在住=。人と人、海や島の記憶をつなごうと2011年以降、東日本大震災の被災地をはじめ国内外の約20カ所で取り組んできた。奈留町では19年、県の「長崎しまの芸術祭」の一環で初めて開き、昨年は新型コロナの影響で中止した。
 今回は8~21日、奈留町内14の集会所などで活動。13日は泊集会所に午前、午後で計約20人が参加した。五十嵐さんがイメージした奈留島周辺の海の緑、教会の白など5色の糸を使用。参加者は編み方を教わり、世間話をしたり互いに教え合ったりしながら和気あいあい、思い思いのペースで編んだ。
 妻と旅行で奈留島に滞在中、旅館でプロジェクトを知り参加した岡山市の山口健次さん(43)は「隣のおばあちゃんと進み具合を共有しながら、失敗しても笑って、にぎやかな雰囲気の中でできた」と充実した様子。泊町内会の矢口俊勝会長は「コロナで集まる機会がなかったが、久しぶりに地域の人たちの笑顔を見られた」と話した。
 五十嵐さんは「以前、ある漁師さんから『網は人を寄せる』と聞いた。人との距離を取ることが求められる中、こうして同じ空間で協力し合って一緒に作ることで、人は自分の存在を確かめ、豊かさや幸せを感じられると再確認した。(完成後は)網の目を通し、地元の魅力を見つめ直してほしい」と話した。
 江上天主堂前で23日午前11時半からお披露目式を開き、12月19日まで展示する。

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