長崎この1年2021<1> 新型コロナ、流行の波とワクチン ウイルスとの戦い 新局面

会見で「治療を受けられずに亡くなる人が出かねない」と訴える泉川教授(右)=5月8日、長崎市役所

 新型コロナウイルス感染症の流行第3波の真っただ中で幕を開けた2021年。春に第4波、夏には第5波が襲った。コロナ下で迎える2回目の年の瀬。ただ1年前と状況は異なる。
 感染対策の“切り札”とされたワクチンの接種が春には本格化。長崎県内で2回接種を終えた人の割合は約8割に達した。治療薬の開発も進む。長崎大学病院感染制御教育センター長の泉川公一教授は言う。「人類とウイルスの戦いが次の局面に入った」
 県内では2月下旬、医療従事者を対象に接種が始まった。県内全市町が5月上旬までに高齢者接種に乗りだし、6月以降、大学や企業による職場接種、県独自の大規模接種も加わって接種率は急速に伸びた。
 しかし、第4波は接種が始まったばかりの5月に感染がピークに。大型連休明け、重症者を受け入れていた長崎大学病院のコロナ病床は満床に近づいていた。「治療を受けられずに亡くなる人が出かねない」。5月8日、長崎市役所で開かれた会見にオンラインで参加した泉川教授は訴えた。その直後、長崎医療圏の病床使用率は100%を超え、人工呼吸器が必要な患者を域外に搬送せざるを得ない状況に陥った。
 夏になると、感染者数はもっと増えた。デルタ株への置き換わりが原因だ。7月下旬から新規感染者数は連日2桁に上り、県は8月10日から飲食店などに営業時間の短縮を要請。それでも感染者は増え続け、19日には過去最多の114人に達した。県は同日、県内全域に県独自の緊急事態宣言を発出。27日には県内で初めて長崎市と佐世保市が「まん延防止等重点措置」の対象になった。
 ただ、第5波では医療現場に変化が起きていた。ワクチンの効果が表れ始め、重症者が激減。第4波ほど病床が逼迫(ひっぱく)することはなかった。11月中旬以降、新規感染者「ゼロ」の状態が続いた。22日、約1カ月ぶりに感染者が確認されたものの、市民生活は日常を取り戻しつつあるかに見える。一方、海外では、デルタ株以上に感染力が強いとされるオミクロン株が拡大。欧米などでは感染者が急増している。
 国内での感染は限定的だが、ワクチンや治療薬の効果など未解明の部分も多く、警戒感が広がる。それでも「これまでみんなで力を合わせて乗り越えてきた」と泉川教授。病床確保などの第6波への備えを静かに進めている。
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 新型コロナウイルス感染症が2021年も猛威を振るった。自然災害や国政選挙など県内の主なニュースを振り返る。


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