正直な人

　辞書を引いてみたら〈何かを隠して言わないでいたり、うそ・ごまかしを言ったりすることがない・できない様子〉とある。「正直」であることが人としての美点なのは疑いがない▲中村法道知事も、とびきり正直な人なのだと思う。県民の一人として率直にうれしい。ただ、4選出馬を決意した舞台裏を包み隠さず話したのは“正解”だったのかどうか、その思いがどうにも消えない▲後継探しが不調に終わったのだという。どの人も首を縦に振らなかった…と。「長崎県の知事」はそんなに魅力の乏しいポストなのか、とつい考えてしまう。それとも、皆が二の足を踏む理由が他のどこかに▲そもそも後継者を見つけるのは前任者の責務なのだろうか。庁内の人事異動とは違う。知事のメガネにかなおうがかなうまいが最後に選ぶのは県民▲一度は退任を決心したリーダーが思い直して先頭で引っ張る次の4年。何だか元気が出ない。激務だ。「しぶしぶ」や「仕方なく」で務まる仕事でないことは知事自身が誰よりも知っているはず▲「しょうじき」の隣の隣は「じょうしき」。〈健全な社会人なら持っているはずのごく普通の知識・判断力〉。「退くつもりでいたけど」と聞かされた県民の気持ちには想像が及ばなかったか。非常識だ－とまでは言わないが。（智）