メメタァ×樋口寛子(新宿ロフト)- ロフトと僕らで楽しい場所を作っていく、そしてそれを続けていく

新宿ロフトと共にあったメメタァの2021年

──まずは今年2021年はメメタァにとってどんな1年だったか、というところからお話を始めていきましょうか。

成悟:初めて2月に新宿ロフトも使う形で『メメフェス』を開催したんですけど、コロナの真っ只中で。

太陽:そうだね。開催できるかな? みたいな感じで。

成悟:だから出てもらうバンドも都内で活動しているバンドだけにして、対策もしっかりして無事開催できたところから今年は始まって。その後すぐ、3月頭の『見放題』もロフトのステージに出たり、弾き語りもけっこうロフトでやらせてもらったりして。

太陽:バンドとしては11月に自分たちのツアーのワンマンがあって、いよいよ『年末大感謝祭』か。ロフトと共にあった2021年だったよね。

成悟:ワンマンをロフトでやりたいっていう思いがあって、一つの目標だったので。それに向けてずっと準備をしていく中で、樋口さんが仕掛けを作ってくれて。

樋口:私自身、彼らのワンマンを応援してましたからね。

太陽:(今年2月の)『メメフェス』を決める段階からワンマンに繋げる1年にしよう、みたいな感じで。(『見放題』以降、11月のワンマンまで)ロフトでライブをやっていない期間もライブ自体は毎月5〜6本くらいやってたし、ロフトワンマンに繋げるための1年だったかもしれないなぁ。

──新宿ロフトでワンマンをやるというのはバンドとしての大きな夢だったのですね。

成悟:もともとメンバー皆と出会ったのが新宿マーブルというライブハウスで。新宿のライブハウスではキャパも大きいし、歴史もあるロフトでワンマンというのはずっと目標ではあったし、樋口さんがブッキングでイベントにずっと呼んでくれていたりしたのもあって。

樋口:メメタァがまだ出始めの頃、ホールに出たときが懐かしいね。その頃から見ている側とすれば、ワンマンの景色はすごく胸にグッとくるものがあったよ。あれからいつの間にか今はお客さんの前で堂々といろんな人の心を掴むようになったんだなぁ、って本当に嬉しくて。どんな人気のあるバンドだって皆、お客さんに見向きもされなかったりいじられたりする時期というのを通ってきているものだからね。

成悟:まだ(ライブ時に)蝶ネクタイをつけていた頃ですね(笑)。

──改めて、メメタァのロフトでのワンマンは樋口さんから見ていかがでした?

樋口:本当に胸アツでした。がらんとしている、友達とか近しい人しかライブに来ていなかったメメタァが、どんどん輪が広がっているのをあのワンマンで見せてもらえたので。他のスタッフも言っていたけど、メメタァがやっとここまで来たね、って。それがすごく嬉しいし、MCで「来年は渋谷クアトロでワンマンをやります!」って言ったけど、そこに遅い・早いというのもなくてね。チャレンジする姿を見て元気をもらえる人っているし、メメタァってそういうバンドになって欲しいなって私は思うよ。隣の畑が羨ましいのは皆そうだから、俺らは俺ら、メメタァはメメタァの歩幅で行くのがメメタァなんじゃないかな、って私はワンマンを見たときにすごく思ったよね。

成悟&太陽:(うなずきながら)嬉しいです。

樋口:今、お世話になっている方たちとやれるだけのことをやろう、でもそこからさらにもう一つ(CDの売上やライブの動員数などの)桁を増やすには力が必要だね、となったら新たな大人の力とかメジャーレーベルの力を借りれば良いんじゃないかな、って思う。バンドにはちゃんと、それぞれの歩幅があるんだから。

太陽:ライブ後の精算のときみたいな話になってますけど(一同笑)、メチャメチャありがたいですね。グッときました。

──メメタァに向けたお話が、これからのバンドマンにも読んでもらいたい内容になってきましたね。ライブハウスはただライブをするだけの場所じゃない、ミュージシャンと共に歩んで応援してくれる場所でもあると。

成悟:嬉しいです。メメタァみたいなバンドが、ロフトというライブハウスとこういう風に付き合えるバンドになれたということが、すごく。

樋口:でもそれは、自分たちの実力だと思うんですよ。メメタァはいろんなライブハウスでも愛されるバンドだなぁと思っていて、たとえばライブハウスとの付き合いはスタッフがいるからその人にお任せ、みたいなバンドさんもいるんだけど、ちゃんと挨拶はできるくらいの器用さはあったほうが良いよね。せっかくその日そのライブハウスに立って、ということは何かを掴んで帰らないともったいないからさ、またどこでそのときの人と会うかも分からないわけだし、そういうことができるバンドが大成しているイメージはあるかな。

太陽:他のメンバーが入って5年くらい、俺は加入して3年ですけど結成から12年、成悟がちゃんとメメタァをやってきた成果でもあるよね。去年、ワンマンの話を決めるときも成悟は俺らの意見に折れずに「僕はロフトで、絶対やりたい」って。成悟がずっとやってきた中での思いを、2021年は叶えられた年だったっていうのもあるよね。

成悟:うん、そうだね。

樋口:そういう思いがあったんだね。メメタァにとっては良い年になったように窺えます、コロナはあれど。

太陽:ロフトのスタッフさんが10人ぐらいかな、休みのスタッフさんも来てワンマンを見てくれて。俺、グッと来ちゃって。本当に嬉しかった。成悟がやってきたことも今のメンバーになってやってきたことも全てが実った1日で、次に行けるな! っていう背中を押してもらえたなぁと思って。

若い世代でこれからを作っていくという気持ち

──成悟さんにとってはSAKANAMONやいろんなバンドを見てきたのがロフトで、そんなバンドを担当していたのが樋口さんで。そんなロフトでのワンマンを成し遂げたことが次への大きな一歩、なわけで。

太陽:上に行ってそれでまた、ロフトに持ち帰って来れたらという気持ちも生まれたしね(一同うなずく)。

──そんなロフトでの2021年ライブの締めくくりが『メメタァ×新宿ロフトの年末大感謝祭2021』。タイトルにはメメタァの名前も入ってますよね。

樋口:そう、共催という形で一昨年、初めて開催して。年末って各ライブハウスさんがオリジナルのカウントダウンに向けてのイベントっていうのを連日やるんですけど、他とは違うことをやりたいなと思ったときに、だったらご縁のあるバンドさんと一緒にやってみようかなと。メメタァは自分たちの仲間だったり、私はコロナ禍でも新宿ロフトでライブをしてくれたりした出演者を混ぜたところで面白いブッキングができないかなと思い、ご提案をさせてもらったのが事のきっかけで。

太陽:一昨年はメチャメチャ緊張したよね。“え! ロフトと? できんの!?”みたいな。

成悟:嬉しかったんですけどね。

太陽:そう、成悟はメッチャ喜んでたけど俺らはビビってた(笑)。でもそれも無事、できてね。

成悟:樋口さんとメンバー4人でロフトバーにあるソファに座って打ち合わせをして。樋口さんのブッキングへの考えと年末イベントにかける気持ちを聞いて、僕らも年代的に少し上に上がってきてて下のバンドを引っ張っていく存在でもありたいなという思いが一致したと言うか。若い世代でこれからを作っていくという気持ちが、他のイベントよりもありますよね。

樋口:確かに。

太陽:『メメフェス』との差別化も、樋口さんはちゃんと考えてくれていて。

樋口:その一昨年の『年末大感謝祭』はすごく嬉しそうな顔でライブをしていたし、分かりやすく全身に出ていたよね(一同笑)。お客さんが数人しかいない昔のバンドの成悟くんから、それなりに埋まっている状況でお客さん皆の顔を見ながらライブをしている成悟くんを見て、ライブハウスのブッキングという自分のやっている仕事もすごいなって思えた。ゼロを1にする瞬間を見て、年末を締められたというのはメチャメチャ良かった、本当に。

成悟:本当にそんな1日でしたね。そしてその日にレーベル(THE BONSAI RECORDS)所属や、初アルバムリリースの発表をしたり。

樋口:バンドにとっては一つの節目だったよね。

太陽:あの日のロフトはすごく自信になったし、力になったと言うか。

──続く、去年の『年末大感謝祭』はまさにコロナ禍で。

樋口:バーステージは無観客配信という形でやらせてもらって。

成悟:ホールのほうだけ少しお客さんを入れて、転換時間の換気も長めにしたり。

太陽:去年は共催はしてないんですよね。

樋口:そう、去年はロフト仕切りでやったの。共催でやるのはメメタァにとってリスクを負わせることになるし、いつかコロナは落ち着いてまた一緒にできるときが来ると思って。で、今年のタイミングでご一緒できるとは正直、思ってなかった。しかもお客さんも交えて、配信にも頼らず通常通りの形態でやれるのは一歩進んだな、というのは嬉しいんですけど、お客さんの足をライブ界隈に戻すのはまだまだハードルが高いというのは最近、身に染みて感じています。

太陽:徐々に徐々に、そのためにやり続けないといけないですよね。

成悟:でも昔はもともとライブハウスのイメージが悪かった時代っていうのもあったと思うんですよ。僕らが知らないこともたくさんあるけど、ロフトもそうだし老舗のライブハウスがライブハウスをポピュラーな場所にして、それで僕らは今ずっとライブをやれているんだなと思ってて。だから今度は僕らが、ライブハウスを取り戻す力になれればと思って。

メメタァが勇気を与える存在であってほしい

──そんな時代も確かにあったと思います。メメタァが新しい力で新しく切り拓いていってくれたら嬉しいし、今年の『年末大感謝祭』はとても意義のあるものになりますね。

樋口:本当に。出演者は10代〜30代で私たちスタッフには40代もいて、4世代混ざって幅広い層で何かできるのもロフトならではなのかな、だし、メメタァより10歳ぐらい若いバンドも出るので、若手のバンドさんにとっては“明日からまたバンドを頑張ろう”って思ってもらえるような、メメタァが勇気を与える存在であってほしいなという思いを込めてブッキングしたところもあって。

太陽:このコロナ禍でも、やり続けてる若いバンドもいるというのも嬉しいですよね。

樋口:そうだよね。WENDYもそうだけど10代のバンドは特に大変だと思う。でも、高知から出演してくれるRIP DISHONORは地元で自主企画もやっている実力派だったりして、引率の先生が「『年末大感謝祭』では全バンドを見て楽しみます」といった連絡をくださって。メメタァを見て感動するんじゃないかな、って思っているんだ(笑)。ここで繋がって今度は彼らが高知での企画にメメタァを呼んだり、なんてことがあるかもしれないし。

太陽:こういう出会いができるから本当にありがたいんだよね。

樋口:全てに意味があると言うか、「点を線にしていきませんか?」というメメタァへの提案でもある機会だから。

太陽:リアクションザブッタとか米澤(森人)くんも、ここで出会えたんだもんね。

樋口:米澤くんも、2年前のことをすごく楽しかったって今も言ってるよ。メメタァとの『大感謝祭』にすごく良い印象を持ってくれているみたいだから。

太陽:嬉しいね。そして俺ら的に胸アツなのはクレ山(CRAZY WEST MOUNTAUN)で。

樋口:そうだね。メンバー皆いろいろな事情があってライブを止めていたんだけど、年末のこういう機会なら出たい、ってメンバー全員一致で思ってくれたみたいで。ロフトに出るのも2年ぶり? くらいかも。『大感謝祭』のタイムテーブルも公開になっているけど、クレ山からバトンタッチでメメタァという『大感謝祭』後半の大盛り上がりを作りたいな、というのをメメタァにもご提案しましたね。

成悟:すごく嬉しかったです。クレ山は高校生のときによく出てたライブハウスからの先輩で。メメタァを組む前から僕らはコピバンでやってたけど、クレ山はオリジナルで大会とかもバンバン出てたりしてて背中を追っていたバンドで。ロフトも僕らより先に出てるしロフトでも対バンしたし、クレ山のロフトワンマンも見に行ってたし。本当に一番身近な先輩でずっと追っかけていたから、(『年末大感謝祭』が)戻ってこられるきっかけになれたのもすごく嬉しいし、クレ山からバトンをもらってライブができる日というのも嬉しいな、って。本当カッコ良いんですよね、クレ山は(一同うなずく)。

太陽:そして俺らが誘ったアナバン(ANABANTFULLS)もいるしマイアミパーティもいるし、MINAMISもいるしね。

成悟:僕らが誘ったバンドも何かしらクレ山とも接点があるしね、『メメフェス』に出てもらったりとかして。クレ山も帰ってくるし僕らもいるので、皆のテンションが上がる日になれば良いなと。

太陽:メチャクチャ良いな、この日(笑)! 最高ですね!

樋口:そう、出演者をただ寄せ集めたわけじゃないし、本当にブッキングには意味があって、それがちゃんとお客さんに伝われば良いなと思いながら当日は見ていると思います。

太陽:みるきーうぇいの(伊集院)かおりちゃんもすごくフレンドリーな子でね、遠征を一緒に帰ってきたこともあるからね。高速のパーキングで一緒にメシ食ってさ(笑)。

樋口:さっきツイッターを見てたら全然知らない子が、私が組んだ4年前のフライヤーの画像と「今も忘れられないイベント」ってアップしてるのを目にして。神はサイコロを振らない/マカロニえんぴつ/バンドごっこ、3組のイベントで組んだ私も忘れてるぐらいだったけど(笑)、そのツイートを見て本当にありがとう、って思った。この日も誰かにとって、何て言うんだろう…影響を受けた1日になるかもしれないでしょう?

『年末大感謝祭』から2022年へとバトンを繋げたい

──出演者だけでなくお客さんにとっても大切な1日になってほしい、そんな思いもありますよね。

樋口:そう、出演者やスタッフの私たちだけがテンション上げるためにやっているわけではもともとないしね。メメタァと一緒にやろうぜ、で始めたイベントが数年後に語り継がれる感じになったらと思っているし、実際に何年か前の『年末大感謝祭』はマカロニえんぴつとか今や人気の上野(大樹)くんとかも普通に出ていたしね。そう考えると何があるか分からないからね。

──では、メメタァから年末大感謝祭への意気込みを!

成悟:本当に樋口さんと毎日のようにやりとりをして、自分たちも主催としてバンドを誘って、いろんなことを決めて。イベンターさんの顔も当日まで分からない、なんてイベントもたくさんある中で、ちゃんと顔が浮かぶイベントを作れるのが純粋にすごく嬉しいなと思ってます。あとはやっぱり、挑戦するのってすごくエネルギーが要るんですけど、それが僕ら的にはまず今年11月のロフトでのワンマンで。それを経てもう一歩次に進むのは、ロフトを楽しい場所にしていくことだと僕は思っているので、ロフトと僕らで楽しい場所を作っていく、そしてそれを続けていく。今年の『年末大感謝祭』はその一歩目になるんじゃないかなと思ってます。

太陽:良いこと言うね〜、以下同文です(一同笑)! けど、今こうやって話を聞いて、さらに身が引き締まった感じです。繋がるバトンを俺らはちゃんとこの日に見せないと、っていう覚悟と、新しい挑戦でもあるんだなと思いましたね。いい日になるよね!

成悟:うん、絶対になる!

太陽:そしてこの日から、2022年に繋げたいよね。『メメフェス』(2月20日・新宿界隈のライブハウスで開催)もあり、渋谷クアトロ(3月27日)でのワンマンもあるので!

成悟:クアトロも挑戦だよね。それと、ロフトも50周年なんですよね?

樋口:そう、ロフトプロジェクトが50周年。コロナの様子も見ながらになるけど、何かをやるときにはメメタァも新宿ロフト出身のバンドとして出てほしいと思っているし、そういうイベントが提案できるように日々のブッキングをしっかりやっていこうという思いになるよね。

──ロフト、そしてメメタァの2022年の活動も楽しみにしています。メメタァは来年あたり新作などは…?

成悟:2020年2月に前のアルバムをリリースした直後すぐ、コロナになっちゃったんですよね。初めてのフルアルバムのリリースでツアーやインストアも全部なくなって、しっかりやりたかったなぁという思いがあるのでそのリベンジを来年、していきたいなと思ってます。行けなかった場所もたくさんあるので来年は行けるように、新しいアルバムを出してやっていきたいなと思ってますね。

太陽:SNSでいろいろと匂わせてるんで(一同笑)。

成悟:また一段と大きくなって、ロフトのステージに戻って来られるように頑張る年にします!

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