重圧を力に変えて 数学教諭、異色の長距離指導者 全国高校駅伝、諫早女子8位入賞 赴任1年目の羽山篤史監督(41)

ゴール後、笑顔で選手たちを迎える諫早高の羽山監督(右)=西京極総合運動公園

 26日に京都市で行われた全国高校駅伝。地元出身者だけでチーム編成した県立諫早高女子を、今春赴任したばかりの羽山篤史監督(41)が8位入賞に導いた。ソフトな見た目で物腰も柔らかい。普段は進学校の数学教諭という異色の長距離指導者が、自身初の都大路で結果を出した。
 自らも諫早高陸上部のOB。当時は男子も全国に出場する実力校だったが、メンバー入りはおろか、練習で女子のペースメーカーを任されるような平凡な選手だった。それでも、教師を志した際、自分の中で決意した。「陸上に育ててもらったから、恩返しのつもりで陸上を教えよう」。部活を受け持つと、すぐに指導者としての素質の高さを見せ始めた。
 初任地の県立佐世保西高で女子を県高校駅伝の4位に導くと、続く県立島原高でも女子を県4位へ。実績が認められ、2014、15年は全国都道府県対抗女子駅伝の監督を任された。陸上関係者の多くが「見た目は穏やかだけど、伝えるべきことは多少厳しい内容でもしっかりと伝えられる」「令和の時代に合った女子の指導者ではないか」と評価するようになった。
 だが、伝統校の監督という重圧は小さくなかった。2度の都大路優勝を果たした松元利弘元監督(65)、日本を代表するランナーだった藤永佳子前監督(40)。「偉大な2人の後で、生徒たちも当然、心配になると思う。それでも、やらないといけない」。初心を忘れず、生徒たちと真摯(しんし)に向き合った。
 その中で意識したのは「観察と対話」だった。特に3年生の不安や不満には積極的に耳を傾けた。故障が多いと感じれば、朝練習に負担の少ないクロスカントリー走を導入。水谷陽菜主将は「先生が代わって最初は戸惑いが大きかったけれど、ちゃんと私たちのことを考えて、熱心に教えてくれる」と信頼を置く。
 レース前日の25日、恩師の松元元監督から「絶対に入賞できる」と激励された。その期待に応えて、1学年後輩の藤永前監督に「いい報告ができる」のもうれしい限りだ。ただ、名門校の監督キャリアはまだ始まったばかり。「連続入賞を目指して、これから1、2年生を育てないといけないですね」。そう話す表情は、いつものように穏やかだった。


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