「黒い雨」救済、長崎も 広島の元原告団長 高野さん「粘り強く訴え続ける」

広島原爆による「黒い雨」に遭った人たちの相談に乗り、被爆者健康手帳の申請に関する書類作成をサポートする高野さん(右)=19日、広島市

 広島原爆による「黒い雨」訴訟の元原告団長、高野正明さん(83)=広島市佐伯区在住=が27日までに長崎新聞の取材に応じ、厚生労働省が示した被爆者認定指針の骨子案について、「(同じ被爆地なのに)広島と長崎は事情が違うというのは大きくひっかかる」と述べ、「司法は内部被ばくを認めている。広島と同じように長崎も認めてもらいたい」と訴えた。
 長崎県・市は1999年度の証言調査を基に、長崎市民らは原爆後に放射性降下物が付着した野菜を食べたり井戸水を飲んだりして、広島と同じ条件だったと指摘している。高野さんは「長崎も広島と同じ条件で、雨は関係ない。(広島高裁の確定判決で)裁判官はそういった条件にあった者は(健康被害を)否定できないとして、内部被ばくを認めている。長崎も同じだ」と指摘する。
 被爆体験者の高齢化を挙げて「時間がない。即認めてくれるように願っている。今が最大のチャンス。諦めず世論に訴え続けてほしい」とエールを送った。
 一方、高野さんは広島についても骨子案のままでは11種類の疾病要件により、救済されない人も出るとみている。「被爆地広島出身の総理大臣が(骨子案を)認めたのはもってのほか。救済する気持ちを全く感じない」と憤った。
 確定判決は、特定の疾病にかかわらず、原爆の放射能により健康被害を否定できないなら被爆者と認めるべきだとしている。疾病要件を維持した骨子案は新たな分断を生み出すとして、「原爆に遭った全ての人を差別している」と批判した。
 さらに国は骨子案を「盾」にして、新たな手帳申請を「却下していくのではないか」と危機感も示した。
 7月の広島高裁判決の確定を受け、原告84人に被爆者健康手帳が交付された。高野さんら「原爆『黒い雨』被害者を支援する会」は、原爆投下後に降った「黒い雨」の国の援護対象区域外で原爆に遭った人も被爆者健康手帳を取得できるよう、9月から広島県内2市1町で相談会を始めた。手帳の申請に向けた書類作成をサポートし、これまでに830人以上から相談を受けた。
 高野さんは「長崎も含め、全員が救済されるために、粘り強く訴えを続ける」と決意を新たにしている。


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