市長さん

 〈…明治維新の年に、当時のロシア皇帝が国際会議を催して「戦争では何をしてもいいのか」という議論をしました。その結果「戦争の必要が人道の要求に譲歩すべき技術上の限界」を全会一致で決定しました〉▲〈戦争でもしていけないことがある〉-1868年の「サンクトペテルブルク宣言」を引きながら〈なぜ核兵器は禁止されなければならないか〉を語るのは4月に亡くなった評論家の立花隆さん。6年前の夏、週刊誌の取材に答えた原爆論が「立花隆 長崎を語る」(長崎文献社刊)に収められている▲核兵器の誕生よりずっと昔から国際社会は「非人道兵器の使用禁止」を申し合わせていて、原爆が非人道性の極致であることは広島・長崎の原爆資料館に行けばすぐ分かる…平易な論法で「知の巨人」が説く▲核兵器禁止条約が1月に発効した。人類の新たな一歩は、しかし、当たり前の一歩でもある。その先を急がなければならない▲来年3月に予定される核禁条約の第1回締約国会議に合わせ、欧州の自治体首長らが「支持会合」の開催を計画しているという。市民の命と暮らしを身近な場所で守る市長さんが、条約への参加を渋る各国政府に向けて発する強いメッセージだ▲呼び掛け人は独ハノーバーのオナイ市長。お名前を記憶しておきたい。(智)

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