【徹底解説】東武6050系とはどのような電車なのか

2021年末、ついに東武鉄道はおろか同一形式を使用している会津鉄道からも戦力外通告を突きつけられてしまった東武6050系。関東では割と名の知れた形式なので名前くらいは聞いたことあるでしょうが、6050系とはどういう形式なのかよくわかっていない人も多いのではないのでしょうか。この記事では東武6050系と野岩・会津鉄道の同一形式について解説します。

関東私鉄では珍しい中距離電車タイプ

6050系は東武鉄道と野岩鉄道、そして会津鉄道が所有する中距離電車です。二両で一つの編成を組み、必要に応じて4両、6両と増結することがあります。車内は二ドアのセミクロスシートとなっていますが、これは関東私鉄の特急型電車以外では珍しい座席配置です。後述の併結運用の際に誤乗防止の目的で車内にも方向幕が設置されているのが同形式最大の特徴です。

主に東武日光線南栗橋以北の普通列車や、東武鬼怒川・野岩・会津鉄道の三社直通運用に充当されていますが、何本か区間急行や区間快速等の優等列車運用にも入ることがあります。

関東どころか全国でも珍しい私鉄の多層建て列車に使用

6050系は、つい4年前までは東武伊勢崎線浅草駅まで快速列車、区間快速列車として直通していました。この快速・区間快速列車は東武日光・新藤原行きの東武線内完結列車と、新藤原から野岩鉄道を越えて会津鉄道会津田島駅までの直通列車が併結して浅草へと乗り入れていたのです。このように行き先が異なる複数の列車を一つの列車として運行することを多層建て列車といい、6050系の雰囲気も合わさってどこかかつての国鉄多層建て急行列車に似たような印象がありました。

西武4000系との多過ぎる共通点

奇妙なことに関東には6050系との共通点が多い車両形式が存在します。それが西武鉄道の4000系です。旧型車からの機器流用、製造時期、車両の設備、運用、そして私鉄への直通と何から何まで6050系と一致している部分が多いため、鉄道をよく知らない人が良く両形式を混同しがちです。とはいえこれら二形式の明確な相違点と言えば一編成ごとの両数、先頭車貫通幌の有無、そしてセンヌキの有無位なので間違えるのも無理はないと思います。閑話休題。

6050系誕生の経緯

6050系はもともと、国鉄VS東武の熾烈な乗客争い、通称日光戦争期の生き残り形式、東武6000系の車体更新車として誕生しました。一年後に開業する野岩鉄道線への直通をするにあたって、既にこの時点で製造から20年が経過していた6000系は車両設備の陳腐化が著しいことから、新線乗り入れのための新車によるイメージアップのほうが良いと判断されてこの形式は誕生しました。ですが改造するにあたってどうしても発生する不足分を補うため、一編成だけ完全新造車として導入されています。その後この新造車は野岩鉄道に譲渡されました。

なお東武鉄道も完全新造の6050系をいくつか保有していますが、そのうち2編成は634型電車、通称スカイツリートレインに改造され、主に行楽期の波動輸送用として活躍しています。

新造なのに譲渡扱いの会津・野岩所有車

その後、野岩鉄道開業時や会津鉄道一部電化による6050系運用拡大の際に、6050系はそれぞれ完全新造編成が一編成ずつ両社に譲渡されています。完全新造なのに譲渡したというのは少し変な話ですが、新型車両として導入するより譲渡車、すなわち中古として導入した方が安上がりになるからです。このやり方は北陸の第三セクター、あいの風とやま鉄道やIRいしかわ鉄道の開業時などでも見られたちょっとした裏技です。

次のダイヤ改正でほぼ引退となる東武6050系

さて、そんな6050系ですが、2020年の時点で既に6000系時代を含めれば50年、完全新造車でも若くても30年はくだらない車両となっています。既に東武鉄道は4年前から6050系の置換を進めており、上記の快速・区間快速運用は特急リバティに格上げと同時に置き換えられ、さらには南栗橋以北の普通列車運用も20000系からの改造車である20400型に段々と置き換えられつつあります。そして、2021年末に発表された2022年ダイヤ改正の内容で、東武鉄道は特急や一部の列車以外会津・野岩方面との直通運転を取りやめるという発表がなされました。同時に、会津鉄道では特急以外の電車列車の運転を気動車に 置き換えるという発表もあり、これらは事実上6050系への戦力外通告と言っても過言ではありません。

東武・会津線で最後の冬となる6050系に乗っておこう

なお野岩鉄道の方は上記のダイヤ改正に伴う減便やリバティの停車駅変更以外は特に置換などの話はありませんが、それでも線内で同形式を使用する列車は数本のみ、となります。東武・野岩・会津三社直通運用をこなす6050系は泣いても笑っても今年度で終了するので、まだ6050系に乗っていない、もう一度乗っておきたいという方は必ず今のうちに乗っておきましょう。

【著者】ミシンロボ

日本全国の鉄道を「日帰り」で旅するライター。 日本全国の鉄道路線を完乗済みです。色々な鉄道の情報を独自の視点から発信します。

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