ナラやカシなどブナ科の樹木が集団で枯れる「ナラ枯れ」の被害が神奈川県内全域に拡大している。道路や住宅地に面していた場合、放置すれば倒木事故につながる恐れもある。特に被害の大きい県央・相模原地域では各自治体が追加予算を組んで伐採などを行うが、処理費用が重くのしかかり、国に財政支援を求める声も上がる。
◆追い付かぬ処理
相模原市中央区の相模原中央緑地。コナラやクヌギなどの雑木林が連なる平地林は「木もれびの森」という愛称で親しまれているが、12月下旬、その姿は大きく変わっていた。
ナラ枯れの木々が点在し、伐採予定を意味するピンク色のテープが樹木に巻かれていた。同市水みどり環境課は「被害が急拡大し、処理が追い付いていない」と話す。
県水源環境保全課によると、県内で初めてナラ枯れ被害が確認された2017年は5市町・約240本だったが、20年には31市町村・約1万9千本と県内全域に広がっている。
相模原市でも17年度は4本だったが、20年度は1122本に上った。市は21年度当初予算で対策費として2千万円を計上したが追い付かず、4月に4千万円、12月に2千万円をそれぞれ補正予算として組んだ。
いずれも市管理の緑地と公園の樹木伐採費。特に公園での被害が増えており、処理費用が重くのしかかっているという。公園課は「公園は多くの市民が日常的に利用するため、倒木があれば大きな被害につながる恐れがある。対応しないわけにはいかない」と話す。
◆予想上回る規模
こうした状況は県央地域の各自治体も同様だ。秦野市は、山間部や公園の対策費として21年度当初予算で計850万円を組んだが、あくまでも応急措置という。市環境共生課は「2年前は被害も限定的だったが、現在は市内全域に広がってしまい、人や建物に影響が出そうな木のみを伐採している」と話す。
厚木市も公園でナラ枯れ被害のあった木は伐採するが、奥山の民有林やハイキングコース沿いの被害木は木に薬剤を注入する樹幹注入などで対処しているという。
相模原市は国の補助金も活用しているが、ナラ枯れに特化した補助事業はなく、市の持ち出し分は大きい。そのため、2月には本村賢太郎市長が県市長会の会長として、ナラ枯れ被害に特化した補助事業の創設や、地方自治体に対する財政支援の強化を求める緊急要望書を国に提出した。
被害拡大期は一般的に数年間とされている。同市は「予想を上回る規模で被害が広まっており、来年以降も同様の状況が続くと考えている。できれば、国単位で対策を考えてほしい」と話している。