ビットコインは1,000万円超えを目指す!専門家が2022年暗号資産市場の注目点を解説

主要な金融商品の2022年相場について専門家に聞く年始特別連載、第4回目は「暗号資産」です。 注目テーマは?気になるビットコインの価格は?マネックス証券の松嶋真倫・暗号資産アナリストに今年の注目ポイントを解説いただきます。


飛躍の2021年を振り返る

2021年の暗号資産市場は、コロナ対策として世界的に大規模金融緩和が継続するなか年間を通して拡大傾向が続き、暗号資産市場全体の時価総額は一時3兆ドルに達しました。

ビットコインの価格も規制等の動きによって5月から7月にかけて暴落する場面はありましたが、年始に記録した1ビットコイン(BTC)=28,000ドルを割ることはなく、11月には1BTC=68,000ドルを付けて史上最高値を更新しました。

このような価格高騰の裏では、テスラのビットコイン購入やペイパルの暗号資産決済対応、エルサルバドルのビットコイン法成立、分散型金融(DeFi)とノンファンジブルトークン(NFT)の注目など様々な出来事がありました。

また、米国ではコインベースのナスダック上場やビットコイン先物ETFの承認などがあり、2021年は暗号資産市場が金融市場の一部になった年であると言えるでしょう。

これらの動きを踏まえて、2022年の暗号資産市場の見通しを解説します。

2022年は暗号資産がより身近な存在に

2022年は暗号資産が私たちの日常のなかでより身近な存在になると思います。

既に米国ではペイパルを通じて暗号資産のオンライン決済が実現しており、ビザやマスターカードは暗号資産(主にステーブルコイン)に対応したクレジットカードの発行を計画してます。日本でもビットフライヤーがビットコイン還元のクレジットカードの発行を開始しました。

ほかにも欧米では、暗号資産による納税を認める地域や、暗号資産による給与受取を認める団体なども増えており、暗号資産の決済利用は今後さらに増えていくでしょう。

また、NFTが暗号資産の身近なユースケースとして台頭してきたことによって、今では誰もが知るエンタメ企業やファッションブランド、アーティストなどがNFT関連のサービスを準備しています。

そのキーワードとなっているのが、フェイスブックのメタへの改名によって話題を集めている「メタバース(仮想空間)」です。NFTがゲームやSNSなど馴染みのあるインターネットサービスに組み込まれることによって、「暗号資産」を意識することなく暗号資産に触れられる機会が増えていき、暗号資産で遊び、稼げる環境も広がることでしょう。

規制の動きには要注意

2022年は2021年に存在感を強めたステーブルコインやDeFi、NFTに対する規制の議論が進むと思われます。

米国では当局者の間でステーブルコインの発行を銀行に限定すべきかどうかで意見が分かれています。発行企業には銀行レベルの財務基盤が必要であるという指摘がある一方で、それをイノベーション促進の観点から反対する声もあります。

米ドル連動型のステーブルコインUSDCを発行するサークルは2021年8月に国法銀行になることを目指すと発表しており、どうなるにしても発行企業に対しては一部の銀行規制が適用される見通しが強いです。

また、DeFiについては明確なKYC(本人確認)がないことや、組織としてどの国に属するのかが不明遼なことなどが問題視されています。マネーロンダリングやテロ資金対策を策定する国際的枠組みFATF(金融活動作業部会)は2021年11月に暗号資産ガイダンスを更新し、「ほぼ全てのDeFiサービスは分散化されていない」との見方から、今後はどの組織が規制に従う義務を負うのかを分析する方針を示しました。

機関投資家向けに仲介機関を通して間接的にDeFiマーケットへのアクセスを可能にするような取り組みもあり、投資家保護やマネーロンダリングとテロ資金対策の観点から何かしらの規制が敷かれるでしょう。

NFTについても現状は「暗号資産には該当しない」との見方が優勢ですが、一部では決済や資金調達に使われているものあり、その用途によって規制のあり方も変わることが予想されます。また、NFTには権利関係が付随しないため、NFT取引にともなう権利関係の処理をどうするのかについてもルールを定める必要があります。

中国人民銀行は暗号資産の次の標的としてNFT取引への監視を強めており、2022年に再び中国リスクが意識されることもあるでしょう。

2022年のビットコイン相場はどうなる?

最後に2022年のビットコインの値動きについて話しましょう。今年は金融市場全体で各国における金融緩和がいつどれだけ金融引き締めへと転換するかによってビットコインの価格も影響を受けるでしょう。コロナ禍が始まった2020年から2021年にかけて、緩和マネーによってあらゆる金融資産の価格が上昇しました。その反動で株式等とともに価格が下落することは考えられます。

一方でビットコインにはそもそも株価のような理論値が存在しないため、金に並ぶヘッジ手段として選ばれる可能性もあります。そのため金融引き締めによるビットコインへのネガティブな影響は比較的小さいと予想しています。

新型コロナウイルスの影響も引き続き無視できません。最近ではオミクロン変異株の拡大によって再び景気後退への懸念が広がっています。ワクチンの普及によって人の移動が活発化し、経済活動が再開する一方で、今年も変異種が新しく出てくる恐れがあります。それが感染力の強いものであった場合にはあらゆる金融資産の売りが強まることも考えられます。

しかし、各国の経済指標や企業業績も回復傾向にあるなかで、2020年3月ほどの暴落が新型コロナウイルスをきっかけに改めて起こる可能性は低いと思われます。金融市場における不確定要素ではありながら、その影響は少しずつ和らいでいくでしょう。

これらを総合的に踏まえると2022年のビットコイン相場はコロナ禍の強い上昇ムードが続くとは言えないものの、悲観的な要素も少ないと思われます。暗号資産関連の新たな規制の動きには注意が必要ですが、大手企業や金融機関らの参入は今年もますます進むことでしょう。

また、新興国を中心に国の情勢が悪化した際には逃避資産として暗号資産が注目される動きも出てくることでしょう。その中で何か大きなニュースがあれば、市場が意識する1BTC=100,000ドルを目指す可能性もゼロではありません。逆に売りに傾いたとしても、昨年の底値付近である1BTC=30,000ドルの水準では底堅く推移すると思われます。

2022年の暗号資産市場では一体どのような出来事が起こり、それがビットコインの価格にどう反映されるのか、私も楽しみで仕方がありません。今年も時々のトレンドを踏まえつつ暗号資産についてわかりやすい説明をお届けして参りますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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