2歳の娘の学費を貯めたいアラフォー夫婦「普通預金よりも効率のいい方法は?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、2歳のお子さんを持つ37歳会社員の女性。学費として、普通預金で貯蓄をしていますが、もっと効率よく貯められる方法が知りたいといいます。どんな方法が有効なのでしょうか? FPの秋山芳生氏がお答えします。


2歳になる娘がいます。将来の大学進学費用として、毎月3万円と児童手当を普通預金で貯蓄しています。普通預金なので、ほぼ金利がゼロと思うと、もう少し効率良く増やしながら貯められる方法はないかと考えています(夫婦共に、老後資金としてつみたてNISAとiDeCoは積み立てしています)。

【相談者プロフィール】

・相談者:女性、37歳、会社員

・夫、41歳

・子ども:2歳

・住居の形態:持ち家(マンション・東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:70万円

・毎月の世帯の支出の目安:20万円

【毎月の支出の内訳】

・食費:10万円

・水道光熱費:1万8,000円

・保険料:4万6,000円

・通信費:8,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):700万円

・現在の投資総額:100万円

・現在の負債総額:4,000万円ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。37歳の妻(ご相談者)と、41歳の夫と、2歳のお子さんのご家庭です。お子さんが社会人になる約20年後には、夫は60歳前後になりますので、老後資金と、お子さんの教育費を同時に作っていく必要があります。家計の改善ポイントを見つけながら、どのように対策すればよいか一緒に考えていきたいと思います。

大雑把すぎる支出の把握の改善から

月の手取り収入が70万円と高額ですが、「毎月の世帯の支出の目安:20万円」で、「毎月の貯蓄額:3万円」なので、おそらく支出が把握出来ていないと思われます。

例えば、住居費に対する記載がありませんが、マンションを所有しており負債が4,000万円あるので、こちらが住宅ローンだとして考えていきます。仮に1.36%の固定金利で、お子さんが生まれてすぐに住宅購入し、35年ローンを組んだとすると、月12万5,000円ずつ返済していると想定していきます。この住宅ローンの返済を支出にカウントするだけで、簡単に20万円の支出を超えてしまいます。

大学の費用や、老後資金のようなまとまった金額を貯めるためには、現状把握が一番重要になります。正しく支出把握していないと、毎月の貯蓄額も曖昧で、改善ポイントもぼやけますし、いつまでにいくら貯めることができるかわからないからです。不安の少ない資産形成をするためには、家計簿アプリなどを活用しながら、支出把握を始めてください。

大学費用には1人につき700万くらいを想定

その上で、今回は詳細のライフプランを組むには情報が少なすぎるので正しくシミュレーションすることはできませんが、教育費に対する一般的な考え方と照らし合わせてアドバイスしていきたいと思います。

大学の教育費は、文部科学省 「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」によると、私立の場合469万円となります。この費用は、国公立なのか私立文系なのか私立理系なのか、また下宿をするのかによっても変わります。

ただし、学費は少子化の影響から年々増えていく傾向にありますので、現在2歳のお子さんが大学に入る16年後には、さらに高くなっているでしょう。また、進学塾や複数大学の併願受験などをすると、受験代や入学金がかかるなどさらに高くなる可能性もあります。

学費が高い私立大学に入る可能性や、受験費用、また、場合によっては下宿の可能性を考えると大学費用に700万円くらいは想定しておきましょう。

入学までにいくら貯めておけばいい?

この大学費用は、お子さんが大学に通う間に支払うものと、入学までに貯めるものとで分けて考えるとよいでしょう。仮に月に5万円の教育資金を支払ってあげられるようであれば、年間60万円です。大学在学中の4年間払うとすると、240万円は入学後の支払いになります。例えば、大学費用が700万円の場合は、240万円引いた460万円を18歳までに貯めればよいことになります。

この18歳までに貯める学資の貯め方は大きく4つの方法があります。1)児童手当 2)現金貯蓄 3)学資保険 4)投資商品 の4つです。

まず、児童手当ですが、0〜2歳:1万5,000円、3歳〜小学生:1万円(第三子以降は1万5,000円)、中学生:1万円が月ごとに付与されます。実際には2月6月10月に4か月分がまとめて支払われます。所得制限があり、目安としては年収960万円以上の児童手当は5,000円と少なくなり、1,200万円以上あれば2022年10月以降は付与されなくなります。

所得制限にかからない家庭であれば、誕生日にもよりますが、合計で約200万円が支給されることになります。この児童手当を丸ごと貯蓄して、学資に当てるとすると、先ほどのケースの場合「700万円−240万円(大学4年間で支払う)−200万円(児童手当)」となり、残りの260万円を用意しておけばいいことになります。

最優先は現金貯蓄

大学入学時までの「期間限定」で確実に貯めていく必要があるので、学資をつくる上で一番優先するのは現金貯蓄です。学資は子の大学入学資金になるため、基本的には18歳になる年の3月までには現金で用意する必要があります。その期限までに、確実に貯めるために「いつでも引き出せる流動性」と「価値の安定性」が重要になるからです。仮に260万円を2歳から18歳までの16年間で作るとすれば、毎月1万3,542円を貯蓄すればいいことになります。

学資保険ってどう?

教育費を学資保険で貯めようとする方も多いです。学資保険自体は、「増えない」「死亡保障も少ない」ことから、あまり意味をなさない上に途中解約すると元本割れすることがあります。例えば留学など、費用はかかるけれどお子さんの才能をのばすチャンスがあった場合、途中解約しづらくチャンスを逃してしまう可能性もあります。

もし死亡保険が必要であれば、収入保障保険などを活用すればよいと思いますし、資産形成を考えるのであれば、ジュニアNISAやつみたてNISAなどを活用した方がよいので、学資保険は中途半端と言わざるをえません。ただ、最近ではいつ解約しても元本保証してくれる学資保険も出ているので、リスクがないのであれば考えてもいいかもしれません。

投資商品の活用は注意が必要

現金貯蓄では金利が0.001%などで増えずらいので、お子さんが18歳で大学に入学するまでに10年以上時間がある方は、税制優遇の運用資産で効率的に増やす方法もあります。例えば、2023年まではジュニアNISAの制度もあるため、年間80万円までを運用する手もあります。

ただし、運用資産は市況によって上がったり下がったりするものです。万が一大学入学直前に大暴落すると入学金を払えないということもありえるので、景気が良い時に少しずつ引き出していくといいでしょう。また、つみたてNISAの非課税枠を使った運用もありますが、学資用と考えると、非課税期間を使い切るのが難しいため、あまりお勧めできません。むしろ。老後資金を作るために利用した方がよい制度と言えます。

相談者の場合は、ジュニアNISAを活用するのもあり

ご相談者様のケースを考えると、700万円の資産を既に所有しているので、学資分は資産が貯まっている状態です。学資以外の支出予定を考えても十分にお子さんの学費が払えるようであれば、ジュニアNISAで運用して少しリスクをとってもいいでしょう。

2023年までは年に80万円までをジュニアNISAに回せます。ジュニアNISAは、人気がないことから制度として廃止になることが決まっていますが、廃止になることが決まったことで、18歳まで解約ができず、用途も学資に限るという制限がなくなり、「いつでも解約してよい」という使い勝手のよい制度に生まれ変わりました。一考の余地があるサービスになったと思います。

老後資産はどう貯める?

学資と老後資産は、引き出す時期が別になるので、運用手法を分けて考えるといいでしょう。学資は既に現金であるのでそのまま充てるか、運用する場合はジュニアNISAがいいでしょう。つまり、学資にはこれ以上追加で積み立てなくていいことになります。

学資用資産と生活防衛費(何かあっても生活をしばらく維持するための費用=生活費3〜6か月分が目安)を残し、後は「老後のための資産形成」に回すのはいかがでしょうか。ご相談者様はつみたてNISA、iDeCoを活用して運用しているので、それ以上の余剰金は日々の生活を充実させるために使ったり、さらに老後資金を充足させるために課税口座でも運用してみてもいいでしょう。

資産形成は充足している様に感じますが、それでもお金のご相談をいただくということは、「どこかに不安がある」からだと思います。ご相談者様の不安の根源は「把握力が足りない」と考えられます。現在の支出状況をしっかりと把握して、いつまでにいくらの資産を作ればよいかを考えながら、余剰なお金は「今」を充実させるために気持ちよく使えるようになると、生活の充実度も高めながら不安のない人生となると思います。

どこか参考になれば幸いです。

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