2022年は自立の年に、お金も仕事も最強の資産とするために

え、自立なんてもうしてますよ……と思った皆さん。
私たちは家族や仕事、さまざまな集団に所属する中で、持ちつ持たれつの関係にあります。お金のやり取りがある関係になかったとしても、万が一のときに保障をしてくれたり、助け合う関係もあります。

そのような中、自立とは所属する集団に対して、過度に依存しすぎたり、与えすぎたりしないような状態を指すのかなと思います。ドライに見てみれば今、所属している職場や暮らしの環境で自立できていると胸を張って言える人は案外少ないのではないでしょうか。

こんな風に偉そうに書いている私も、本当に自立して暮らせているな、と思ったのは30を過ぎてからな気がしています。


18歳で本当に大人になる社会に

2022年4月より、成人年齢が18歳に引き下げられます。これからは、高校を卒業するころには人間を大人として扱い、契約する能力が与えられることになります。それは例えば、18歳で起業をして単独で資金調達することもできますし、詐欺に遭って借金を抱えてしまう危険性もあるのです。

ニュースでは責任のマイナス側の話が強調されがちですが、本来これはフラットに、人生の自由をより早く実感できる前向きな話でもあります。

責任の重さと自由を天秤にかけると、お金を管理する能力と、意思決定のために正しく情報を手に入れる能力があるかで、見える世界が変わってきます。読者の多くは成人になってから年数が経っているかもしれませんが、自分たちが持っている選択肢と、それを履行するための責任を捉えなおすと、大人になることって、自立も可能にできることなんだな、と感じるのではないでしょうか。

投資信託の教育も始まる

また、同じく4月からは、高校の家庭科に資産形成として「投資信託」を学ぶことが加わると話題です。

これまでの家庭科では、世にあるリスクに対して慎重さを問う教え方が多くを占めていました。しかし、近年の低金利の中で低リスクの資産運用をしても、望むような将来にたどり着けない可能性があります。

誤解を恐れずに言えば、株式やほかの投資リスクを取ることが逆に安心できる老後の確保につながる時代です。最も保守的な教育現場でも、リスクを含めて意思決定をする力を育むことがテーマとなりつつあります。

もともと、お金の教育で最も重視されてきたテーマは「自立」です。政府の会議で定められた「最低限身に付けるべき」金融リテラシーの内容を見ると、小学生と高齢者を除くあらゆる世代に向けて、自立する能力を養う・実現することがこれでもかと述べられています(図表)。特に生活設計上は職業選択をとても重視しています。その中で、ちょっとしつこいな、と思えるくらいに入りと出のバランスを考えて、支出を計画的に行えることがゴールに掲げられています。

しかし、実際の生活を省みると、そんなにうまく生活を設計したり、見通したりすることは難しいなと思います。正直、何か大きな買い物が決まってしまってからあたふたする方が私たちは多いのではないでしょうか。また、職業選択も、昔より仕事につく方法が複雑になっていて、かつ、その仕事から得られる収入も不確かなのも事実です。この不確実な時代に、もう少しだけリテラシーを高めて、行動できる能力を付けることが、自立につながるのだと思います。

仕事という最強の資産

自立を支える最強の武器は、仕事をする能力です。老後生活への不安であったり、足元の生活の不安も、その多くはもし仕事が持続的に維持できるのであれば、かなり解消できるものだったりします。年の初めから仕事の話かぁ、と感じるかもしれませんが、長く所得を得るために働く意欲も含めた仕事の能力は、多くの人にとって最大の資産であることも多いのです。

この、稼ぎを得る能力を人的資産などと呼ぶときに、長く働ける職場を確保し続ける能力もまた自立と関連があるのではないでしょうか。ここでの自立は、独立することを意味している訳ではなく、自分と会社との立ち位置の関係になります。この資産の価値を高く保てれば、人生通算で見た収入と支出の差として、安心を得ていくことが可能となります(図表)。

会社と自分との程よい関係を

会社と自分の間でギブアンドテイクの関係を見出すことは簡単ではないかもしれません。ですが、自分がより多くを与える立場にあれば、モチベーションを維持したり、交渉力を持ったりという形で、人的資産が高まります。「主体的に考えよ」「当事者意識を持て」みたいな暑苦しい訓示ではなく、単に、自分の資産を増やすイメージで会社に対して自立していくことは、ビジネス本とかでも案外意識されていない側面だなと思うのです。

というわけで、自立しよう

自立しようとかいわれると、なんだかめんどくさい所に来ちゃったな、な気持ちになるものです。しかし私たちは本当は、みんな自立した上で好きなことをやっていたいのではなかったでしたっけ、とも思うのです。年初の、ちょっとだけ真面目なことを唱えても許される雰囲気の中で、だからこそ私は自立をテーマに掲げたいと思っています。

家計簿に限らず、Fintechがいろんな「金融をわかりやすく」するツールを生んでいる中で、今、一番自分の自立を遠ざけているものは何かを考えてみて、それにアタックしてみませんか。そんな、大事なチャレンジの側で、物事を考えていければと思っています。

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