長崎新聞の双方向情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)で1~3日、新年の家庭の食卓に並んだお雑煮の写真やレシピを募ると、計84人から投稿があった。地域や家庭によって多様なお雑煮を紹介する。
✓ 長崎市近郊は、伝統的な「長崎雑煮」が多い。ブリ、鶏肉、かまぼこ、唐人菜などを使い、だしはかつお節、昆布が多い。具材を割り切れない奇数にすることで縁起を担ぐ人も。
◎広いわんに具材並ぶ
だしはかつおと昆布。具材はブリ、鶏肉、かまぼこ、昆布巻き、唐人菜、シイタケなど。唐人菜の芯を薄切りにして底に敷いて柔らかくしたもちを乗せ、具材をきれいに並べます。
具材が多いので、広いおわんを使います。長崎では昔ながらのお雑煮の型と思います。
◎移住30年目で初挑戦
焼きあごのだしに、具材はブリ、大根、里芋、ニンジン、ゴボウ、干しシイタケ、かまぼこ、カツオ菜、鶏肉、丸餅。
今年は、長崎市に住んで30年の節目。数年前からチャレンジしている「長崎検定」で勉強した「長崎雑煮」に、初めて挑戦してみました。
食材は焼きあごを含めて全て県産です。ようやく私も「長崎人」になれたかな。
◎母の味を忘れず継承
だしは昆布とかしわ(鶏肉)とシイタケのもどし汁。具材は鶏肉、シイタケ、かまぼこ、かつお菜など。
小さい頃から、母が毎年作ってくれたお雑煮。レシピはありませんが、毎年調理を見ていたので、同じ風味で作れています。
今は高齢者施設で暮らす母。娘の私のこともわからなくなるほど認知症が進んでしまいました。これからも私が忘れず、母の味を継承していきたいです。
◎健康へ野菜スープ風
チキンブイヨンとあごだし、めんつゆ、日本酒、しらだし、塩、コショウで、だし汁を作り、ハクサイ、キャベツ、玉ネギ、ニンジン、セロリ、えのき、新ショウガ、ニンニク、トマト、ブロッコリー、ベーコン、ネギを入れた野菜スープ風の雑煮です。健康のために数年前から作っています。
誤嚥(ごえん)防止のため、野菜も細かく切っています。小さく切った、スルメ、昆布、ミカン皮をのせると風味が変わりますよ。
✓ 県北・県央地域は、餅以外は、白菜やかつお菜のみというシンプル志向が目立った。だしはあご(トビウオ)が人気。昆布やスルメ、あんこ、いくらなどトッピングにも個性が見られた。
◎自家製の餅、白菜で
具材は自家製の白菜。あごだしに砂糖を少々、みりんと薄口じょうゆでシンプルに味付けます。餅も自家製です。
平戸市の夫の実家に伝わる家庭の味。結婚して初めて食べました。私の実家は雲仙市で具雑煮だったので、シンプルだったことにビックリ。しかし、あごだしの味がしっかり感じられ、自家製のお餅や白菜がとてもおいしく、おかわりしてしまいます。
◎変わらない故郷の味
松浦市今福町の実家のお雑煮です。だしはいりこ。具材はかつお菜。
実家の地域は白菜が一般的だそうですが、私が大村市に住んでいたころ、かつお菜を知り、今は実家の畑で作ったかつお菜を入れてもらっています。唐人菜も作っているので、そちらを入れてもらうことも。
仕上げにかつお節をかけるのが定番。長崎市方面の具沢山(だくさん)の雑煮と違い、シンプルだけど、変わらない故郷の味です。
◎仕上げには あんこを
あごだしのすまし汁に、具材は白菜と丸餅のみ。飾りに昆布とさきいか。そして、最後にあんこをのせて出来上がりです。
以前、同じ地区の友達にわが家のお雑煮を振る舞ったら「あんこの乗っとる!」とびっくりされました(笑)。
1キロも離れてない場所なのに、お雑煮って違うのかと驚いたのを覚えています。
◎イクラ カキで高級感
だしのベースは昆布とあご。具材は餅とかつお菜、鶏肉、カキに、かまぼこ、イクラをトッピング。
私は北海道出身で、大村市に嫁いで初めていただきました。北海道と違い、あっさりしていて、かつお菜も初めて見たし、イクラやカキも高級な印象でした。
でも、大村の友達に聞くと、イクラやカキは入れないという人がほとんど。嫁いですぐに義母が他界したので、どうしてこの具材になったのかは、わかりません。
✓ 県南地域を中心に島原市の郷土料理「具雑煮」も多く寄せられた。豊富な野菜に加え、高野豆腐を入れるのも定番のようだ。
◎昔は「餅をたくさん」
かつおだしを使い、大根、ニンジン、白菜、シイタケ、高野豆腐、鶏肉、きりこぶ(切り昆布)、かまぼこ。島原の雑煮は切り昆布と高野豆腐が特徴かもしれません。
昔は年末にご近所や親戚で集まり、餅をいっぱい作っていましたので、じいさん、ばあさんから「腹のすかんごと。そして長生きできるけん」と、餅をたくさん食べさせられました(笑)。現在は2、3個が限度です。
◎母の腕に近づきたい
具材は鶏肉、大根、にんじん、里芋、レンコン、白菜、ホウレンソウ、シイタケ、高野豆腐、紅白かまぼこ、ちくわ、卵焼き、こんにゃく、ゴボウ、餅の15種。
島原市在住の母がお正月に作っていた具雑煮。母から「何種類入ってるでしょ」と聞かれ、数えながら食べるのがとても楽しく、その時の母のうれしそうな表情も忘れられません。
少しでも近づけたくて、今年は頑張ってみました!
◎アカガイは祖母直伝
アカガイの缶詰を汁ごと入れ砂糖としょうゆ、水を足して甘辛く味付けます。
丸餅はそのまま入れ、柔らかくなるまで煮る。最後に春菊を入れて出来上がりです。大分県竹田市の実家で父方の祖母直伝の珍しい雑煮です。
◎豚汁バージョン好評
高校生、中学生の子どもたちには、おせちとお雑煮は不人気なため、今年は豚汁バージョンにしてみました。おもちは各自、食べたい分だけ焼いて入れます。
豚汁なら余っても、おみそ汁として夕飯にも出せるし…と思ったら、大人気で今年はすぐになくなりました(笑)
✓ 地域差だけでなく、家庭によってもバリエーションが広がる。親から子へ、子から孫へと味を受け継ぐ人も多かった。投稿を見た長崎市の料理研究家、脇山順子さん(85)は「100軒あれば100の味があるのが雑煮の良いところ。昔は一家の伝統として同じ味が受け継がれてきたけれど、人の往来が盛んになり、それぞれの味が融合し、新しい『わが家流』の味ができている」とほほ笑む。そしてこう願った。「雑煮は変化しながら家庭に伝わる小さな食文化。家族で雑煮を食べながら、新年の夢や希望を語る文化は変わらず続いてほしいですね」
(六倉大輔、三代直矢)