佐世保重工業(SSK)最後の新造船命名 主力事業から“撤退”

SSK最後の新造船となった中型ばら積み船「TOLMI」と、記念撮影に臨む関係者=12日午後3時48分、佐世保市立神町

 長崎県佐世保市の佐世保重工業(SSK)で12日、同社にとって最後の新造船となる中型ばら積み船(8万2千トン)の命名式が行われた。1953年に初めて進水した「永邦丸」から数えて510隻目。世界に先駆けて大型タンカーを建造するなど、地域経済を支えてきた中核事業からの事実上の撤退となる。今後は修繕船事業を主力に、経営再建を目指す。
 船はギリシャの海運会社が発注した。全長約225メートル、幅約32メートル。穀物を積載する。13日に船主へ引き渡され、韓国に向けて出航する。
 命名式では、船名が「TOLMI」(トゥルミ)と発表された。支綱の切断後、くす玉が割れ、関係者が拍手を送った。
 SSKは昨年2月、新型コロナウイルス禍に伴う受注の急減などを理由に新造船事業の休止を発表した。これに伴い、子会社を含む全従業員の3割近くに上る250人規模の希望退職者を募集。応募した248人が5月までに順次退職する。
 今後は海上自衛隊や米海軍佐世保基地が近くにある強みを生かし、修繕船事業に注力。新造船用の第4ドックは修繕船兼用に改修する。改修工事は9月末に完了予定。
 名村建介社長は「当社の生き残りと事業継続のための苦渋の決断となった。修繕船事業は地の利に加え、設備面でも明らかに優位性がある」と述べた。

◎「日本一の修繕ヤード目指す」 名村社長

「日本一の修繕ヤードを目指す」と話す名村社長=佐世保市立神町、SSK

 佐世保重工業(SSK)の名村建介社長は12日の式典後、報道陣の取材に応じた。今後、新造船に代わって修繕船を主力事業に成長させる考えを改めて示し「日本一の修繕ヤードを目指す。新生SSKとして、しっかり羽ばたいていく」と意気込みを語った。
 新造船用の第4ドック(長さ400メートル)は修繕船兼用に改修する。名村社長は、第3ドック(長さ370メートル)と合わせて「国内最大級の大型修繕用ドックを2基有することになる」と強調。修繕で重要な岸壁が総延長約1200メートルあることも強みとし「日本でも希有(けう)な修繕ヤードで、優位性があると自負している」と自信を見せた。
 これまで修繕の主力だった自衛隊艦艇に加え、海上保安庁の巡視船、米艦船、客船、液化天然ガス(LNG)運搬船などの修繕工事に積極的に取り組む方針を掲げ「しっかり競争していけると確信している」と述べた。
 第4ドックを新造と修繕の兼用とし、新造の機能を残すが、「少なくとも当面は修繕船事業に集中して取り組んでいく」と説明。親会社の名村造船所(大阪市)伊万里事業所での新造船について、今後SSKで工事を補完する可能性を示し「佐世保の艤装(ぎそう)関係の機能は、グループの大きな力になり得ると考えている」と話した。


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