パーキング・パーミット

 手足が不自由な息子の足の状態がひどく悪化した時期があった。少し外の空気を吸わせようと一緒に車で買い物に行った。商業施設の入り口付近の駐車区画が埋まっていたため離れた場所に止めたが、難儀した▲公共施設、商業施設などには歩行が困難な人に限定した駐車区画がある。一定の条件を満たす身障者、高齢者、けが人、妊産婦らを対象とした利用証を車のフロントガラスなどに示せば、専用区画に止められる事業を県は進めている▲パーキング・パーミット制度と言い、県内では2007年にスタートしたが、県民に浸透しているとは言いがたい。専用区画に健常者が勝手に車を止めて困っているという声も本紙に寄せられている▲県によれば、利用証は昨年11月末までで計約4万枚交付。着実に増えているが、協力施設は約770施設で微増にとどまる。県は「周知不足」として、制度の分かりやすい呼称も含めて準備中だ▲利用対象の拡大を求める声もあるが、対象者が増えすぎると切実に必要とする人が利用しづらくなる可能性もあり、県は丁寧に検討する意向▲県内で、歩道が狭くて健常者でも歩きにくいところは少なくない。歩行困難な人が家に閉じこもらず気軽に外出できるまちづくりの実現にはまだまだ課題が多い。一つ一つ改善していくしかない。(貴)

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