宿泊施設確保、治療薬の提供… 長崎県、コロナ「第6波」へ備え着々

 この年末年始は、新型コロナウイルス感染第3波に襲われた1年前と比べ、全国的に流行は抑えられている。だが、デルタ株より感染力が強いとされるオミクロン株の市中感染が東京や大阪、福岡などで確認されており、長崎県や医療機関は第6波に備え、宿泊療養施設の確保や治療薬の提供、県民への注意喚起などを着々と進めている。

 ■検査機関423施設

 県は第6波の1日当たりの最大新規陽性者数を170人と試算。第5波で最多だった114人(8月19日)の約1.5倍だ。ただ、この数値はデルタ株を想定している。担当者は「オミクロン株の具体的な特性が明らかになった時点で、修正が必要かどうか検討する」と話す。
 そうした中、県内の専用病床は、県が感染ピーク時に必要と見込む546床を上回って確保済み。軽症者向けにホテルなどを借り上げる宿泊療養施設の部屋数についても、県は28日、375室を追加確保したと発表。「緊急時」フェーズで最大920室になる。
 県内で検査ができる医療機関は20日現在、423施設まで増加した。県医師会は今月中旬、検査に加え、抗体カクテル療法などへの協力も会員に要請。森崎正幸会長は「ワクチン接種や治療薬の開発が進んだ。1年前に比べ、できることが増えた」と話す。
 同療法に使う点滴薬のうち「ロナプリーブ」はオミクロン株には効果が低く、厚生労働省は投与を推奨していない。一方、24日に国が特例承認した「モルヌピラビル」は、軽症者に使える国内初の飲み薬で、重症化を防ぐ効果がある。県は「医療機関や薬局などとの調整を進めたい」と提供態勢づくりを急ぐ。

 ■換気とマスクを

 長崎大大学院の森内浩幸教授は「何でも控えましょうという感染状況にはない。しっかり換気をしてマスクを着けるなど、これまで通りの対策をしっかりやってほしい」と県民に要望。オミクロン株への備えについては「現在は水際対策で感染拡大までの時間を稼いでいる。(県民の)命を守るには医療体制の維持が重要。そのためには最悪のシナリオを想定し『箱、物、人』の準備を整えておく必要がある」と話す。
 中村法道知事は28日の会見で、県民に向け「年末年始に県外と往来する際は移動先の感染状況を確認し、慎重な検討を」と注意喚起した。


© 株式会社長崎新聞社