神山健治監督・脚本のWOWOWオリジナルアニメ「永遠の831」 先行上映試写会レポート!

WOWOW開局30周年記念作品としてお届けする神山健治監督・脚本による新作長編アニメ『永遠の831』。 その先行上映会が1月15日(土)、 都内某所で開催された。 本作は『攻殻機動隊 S.A.C』シリーズ、 『東のエデン』シリーズなどを手掛け、 日本アニメ界を牽引してきた神山健治監督の最新作。 登場人物たちを取り巻くリアルとフィクションが融合した世界観や、 作品に込められた深いメッセージ性など、 本作を見ることでしか知ることのできないものが詰まった作品となっている。 今回の先行上映会では、 一般試写会後に特別トークイベントを実施。 神山健治監督を始め、 浅野スズシロウ役の斉藤壮馬、 橋本なずな役のM・A・O、 亜川芹役の興津和幸、 angelaのatsukoとKATSU、 カノエラナといった豪華なキャスト&アーティストが登壇した。 登壇者のみなさんが挨拶を終えると、 さっそくトークコーナーへ。 まずは、 オリジナル脚本と監督として、 本作の世界を作り上げた神山監督が『永遠の831』に込められた思いについて質問されると、 「コロナ禍になってからの日本を、 アニメーションを通して切り取ってみようという思いでした」と話した。 楽しんでもらうことを第一にしたアニメーション作品が多いなか、 苦しい状況をテーマにするのはどうなのかとも考えたそうだが、 「人生のなかでも1度しか体験しないであろう現在の日本の状況を、 作品のなかに入れ込みたいと思いました」と、 作品に込められた熱い思いを語った。 続いて、 主人公・浅野スズシロウの声を担当した斉藤が、 演じるうえでこだわった点に関して聞かれると、 「物語は、 主人公であるスズシロウの目線で進んでいくのですが、 あまり自分の中で誇張しすぎずフラットな目線で、 スズシロウがどう感じているのかを過不足なく入れ込むことですね」とコメント。 声優としてキャラクターと向き合う姿勢を話した。 また、 斉藤が実は神山監督の作品の大ファンであることを指摘された際は、 現場ではそういった気持ちをあまり伝えられなかったといい、 「ファンです!」という大きな一声を神山監督に直接届ける一幕も。 それに対して神山監督は「キャスティングは、 この人の中にキャラクターと合致する部分があるはずだと思って選んでいるので、 一緒に仕事できて光栄でした」と感謝を述べると、 ステージは和やかな雰囲気に包まれた。 続いての質問は、 橋本なずなを演じたM・A・Oへ。 なずなを演じるにあたってのポイントを聞かれると「最初のアフレコの際に、 どのくらい演技に悲愴感を含めたら良いのか分からなかったのですが、 スズシロウに寄り添っていく感じで、 という監督のディレクションをいただけたので、 とてもクリアになりました」と、 現在の演技ができるまでの過程を吐露した。 続いて、 亜川芹を演じた興津が、 自身の役に関して「彼は犯罪者でありつつ、 それだけでは語れない人物」だと言い、 「大人になったからこそできるなにかを考えている男だと思います」と、 一言ではなかなか言い表せない亜川というキャラクターを語った。 また興津は劇中でタバコを吸う亜川を演じるにあたって、 自身も普段は吸わないタバコを吸って挑戦したそう。 「この世界に生きている人物を、 誇張せずに自然に表現するために、 自分も肉体の状況を変えてみたらと思ってやってみました」と、 並々ならぬ役作りのこだわりを話した。 質問はここから、 本作の世界観を引き立てる楽曲を担当したアーティストのみなさんに移る。 angelaのatsukoは、 自分たちが手掛けた本作の主題歌「ひとひらの未来」に込められた思いについて聞かれると、 自身が上京してきたときの状況と作品が重なることを話題に挙げながら、 「前を向きたくなる楽曲にすることを目指しましたね。 ドンと大きくではなく、 風のようにふわっと背中を押す曲になっていると思います」と語った。 angelaのKATSUは、 「監督からいただいていたオーダーが、 曲のテンポが速すぎない、 遅すぎない、 明るすぎない、 暗すぎない、 だったんですよ(笑)」と暴露すると、 会場内は笑いに包まれた。 しかし、 この作品に合うのは確かにそういう曲だと気付いたと語り、 「時間というテーマがある作品なので、 どのように永遠を永遠じゃなくするか、 季節を変えていくような曲を試行錯誤してできた曲です」とコメント。 さらに「頑張りました、 だって監督のファンですもん!」と、 斉藤に続きこちらでも神山監督への熱いメッセージが伝えられた。 続いて、 本作のオープニングテーマ「キンギョバチ」を手掛けられたカノエラナは、 楽曲に対してのこだわりを聞かれると、 「主人公のスズシロウとは、 年齢や性格も似ているなと感じる部分があって。 彼が物語のなかで感じる怒りの感情や苦しみを自分の中で曲に落とし込んだら、 ロックな曲に仕上がりました。 」と語った。 また、 「キンギョバチ」という楽曲のタイトルに関しては、 「いろいろ考えたとき、 世間に感じる透明な壁が金魚鉢のように見えたからです」と、 その由来も明かした。 ここで、 本作のテーマのひとつである「登場人物や社会に課されながらも、 手を付けられていない問題」という部分にちなんで、 登壇者全員に「やらなくてはいけないと思いながらも、 まだ、 手を付けられていないこと」という質問が投げかけられた。 神山監督は「次の作品の脚本と絵コンテですね。 本作が出来上がって、 皆さんと会えるのがうれしくてさぼってしまいました…」と、 少々リアルな部分を吐露。 興津は「ブルーレイレコーダーのハードディスクを整理して、 本作をちゃんと通常画質で見られるようにします」と、 本作を楽しむ気満々な姿勢を見せた。 M・A・Oは「やりたいゲームがいろいろ残っているんです…」と、 少々弱気に語り、 斉藤は「親知らずを抜く。 あと3本埋まっているのですが、 恐怖のあまり抜けていないので、 皆さんお早めに…」と来場者にアドバイスするような場面も見られた。 atsukoは「年度末までに、 事務所の4人分の健康診断の予約をとらなければ」というリアルな話をすると、 KATSUは「胃カメラ苦手で……」と続き、 それだけではなく「これまでライブができなかったので、 この時代に生まれた楽曲だからこそライブをやりたい」とアーティストらしい部分を語ると「今、 一番いいこと言ったよね!」と自慢げになり、 会場から笑いが起こった。 またカノエラナは、 KATSUに「いいこと言ってくれる!」とハードルを上げられて笑いながら「ガスコンロの設置ですね…。 3年くらい設置してないので」と、 生活のちょっとした秘密を暴露した。

その後はangelaとカノエラナによるライブコーナーへ。 まずは、 初パフォーマンスとなるカノエラナによるオープニングテーマ「キンギョバチ」から。 カノエラナは今回のような舞台挨拶も初めてだといい、 「angelaのおふたりに頑張れ!と背中を押していただいてなんとか…」と暴露したが、 ライブパートが始まるとその目つきが一変。 今までのかわいらしい雰囲気とはうって変わって、 堂々とした歌唱とパフォーマンスを披露した。 カノエラナがあげたボルテージはそのままに、 angelaのふたりが登壇。 ギターの準備中にトークでつなぎ、 自然な流れでライブパートに移行するという、 ベテランの風格を見せた。 主題歌「ひとひらの未来」を、 圧倒的な歌唱力とパフォーマンスで披露し、 会場からは声援が出せない代わりに、 非常に気持ちがこもった拍手が鳴り響いた。 ライブパートが終了すると、 ふたたび全員が登壇し、 最後の挨拶に。 神山監督から「日本の今という、 僕が切り取りたかった部分を、 キャストやアーティストのみなさんが作り上げてくれました。 実際に出来上がった作品を見て、 皆さんにどう感じていただけたのかを知りたいです。 是非、 放送をみていただけたらと思います」と、 来場者や視聴者への感謝の言葉が告げられ、 先行上映会は幕を閉じた。

特別トークイベントの模様はWOWOW公式YouTubeチャンネルにてアーカイブ配信する。 さらに、 主題歌のangela「ひとひらの未来」は1月21日(金)にデジタルリリース、 オープニングテーマのカノエラナ「キンギョバチ」は1月26日(水)にデジタルリリースされる。 ぜひ、 チェックしていただきたい。

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