アップデート

 〈転ばぬ先の杖〉の大切さはよく分かる。岸田文雄首相が「先手」や「早め」を繰り返すのも、きっとそのためだ。でも、無精者の市民はつい考える。「杖」の本数が増えると持ち歩くのが大変、それでも手放せない杖なら、なるべく軽くて丈夫でスタイリッシュな方が▲そんな思いを知ってか知らずか、政府新型コロナ対策分科会の尾身茂会長がこう発言した。「何でもやめるという、ステイホームなんて必要ないと思う。リスクの高いところに集中して、みんなで気をつけるということ」▲対オミクロン株で有効なのは「人流制限」ではなく「人数制限」だ…と尾身さん。基本的な対策を講じ、多人数や大声などをきちんと回避できれば「店を閉める必要はないと思う」と踏み込んだ発言も▲「※」付きの「個人の見解」ではない。早のみ込みは禁物だが、ウイルスとの距離感を見極めつつ、対応のアップデートが必要-という使命感が言わせた言葉のようにも思える▲尾身発言の狙いはさておき、あすから本県など1都12県に「まん延防止等重点措置」が適用される。長崎、佐世保両市では不要不急の外出自粛を呼び掛け、飲食店には営業時間短縮を要請する▲判で押したような、とか、代わり映えしないとか…言いたいことは今しばらく、ぐっと飲み込んで。(智)

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