5~11歳ワクチン接種 特例承認へ 専門家「重症化リスク高い子に朗報」 安全性に不安、情報なく戸惑いの声も

 5~11歳を接種対象にした米ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンが21日にも、特例承認される。対象年齢の子を持つ保護者らの間では、効果の期待と安全性の不安が入り混じっている。専門家は「風邪を引いても命に関わる疾患のある子もいる」と重症化予防の意義を強調。一方で市町からは「供給量など具体的なことが分からず準備を進めにくい」との声も漏れる。
 長崎県佐世保市が17~19日に公表した感染者計249人のうち、10歳未満は20人。10代も同数で、合わせると16%に上る。
 「現実に迫ってきている」。11歳の娘がいる同市の女性会社員(38)は若年層への広がりを肌で感じ、対象年齢引き下げを歓迎する。ただ「これからの成長や、将来子どもを産む時にワクチンの影響が出ないか」との不安もあり、しばらくは接種させず様子を見るつもりだ。コロナ禍でさまざまな制約が続く中、空手を習う娘は大会開催を望み「すぐにでも打ちたい」と話しているという。
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 日本小児科学会理事なども務める長崎大大学院の森内浩幸教授は「医療的ケア児など重症化リスクの高い子どもにとっては感染が命に関わる場合もある」として承認を朗報と受け止める。
 その一方で、健康児への接種には「メリットとデメリットのバランスで考えるべきだ」と指摘する。新変異株「オミクロン株」に対し重症化予防の効果が期待できるものの、2回接種者のブレークスルー感染も多く確認され、感染予防効果は限定的とみている。「ワクチンの限界を親子で知ってもらった上で判断してほしい。接種の有無で差別やいじめにつながらないように正しい情報を伝えることが重要」とした。
 接種後の副反応はどうか。森内教授によると、米国では5~11歳の約800万人が接種を済ませ、接種部位の痛みや発熱などは大人より軽く済んでいるデータがある。
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 高齢者の3回目接種に加え、新たなミッションに直面する市町は頭を悩ませる。ある自治体の担当者は「何も決まっていないのに国からは準備を進めるよう指示されている」と戸惑う。長崎市の担当者は「供給量と時期が分からないと具体的に動けない」。
 個別接種か集団接種かも検討課題だ。小児用は1瓶10回分。同市担当者は「かかりつけ医による個別接種が(副反応への対応などから)望ましい」としながらも「集団接種なら10人単位でも集まると思うが、クリニックでそれが可能かどうか」。そのため医師会と詳細を詰める必要性があるという。対馬市の担当者は「12歳以上でも接種時に泣きだす子がいた。幼い子がじっとしてくれるか」と気をもむ。
 「同じファイザー製でも一般用と小児用は別物。事故が起きないよう保管や流通にも細心の注意が必要」(長崎市担当者)との声も。小児用は1回分に含むメッセンジャーRNAの量が一般用の3分の1で、希釈方法も異なる。
 さらに離島の医療提供は本土と比べ不利だ。対馬市内の小児科医は5人。市担当者は「近隣自治体と組んで医師をその都度融通してもらうこともできない。島内の小児科医だけでは負担が大きすぎる」と明かす。


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