読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、37歳の会社員の女性。新婚で、これから貯金を頑張りたいという相談者。そこで、夫婦2人の生活費と、夫のお小遣いをどうやって決めたらいいか知りたいといいます。FPの高山一惠氏がお答えします。
新婚です。夫は貯金がほとんどなく、今から頑張って貯めたいのですが、夫婦二人の生活費と夫のお小遣いの金額の決め方を知りたいです。
近いうちに子どもを希望していて、子どもが小学校に上がる前ぐらいには持ち家を持ちたいと考えています。また、2年後に車を買い替える予定です。
【相談者プロフィール】
・相談者:女性、37歳、会社員、年収250万
・夫:32歳、公務員、年収580万ぐらい
・住居の形態:賃貸(九州地方)
・毎月の世帯の手取り金額:45万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:64万円
・毎月の世帯の支出の目安:38万円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:8万5,000円
・食費:5万円
・水道光熱費:2万円
・保険料:1万4,000円
・通信費:1万7,000円
・車両費:3万円
・お小遣い:?
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:10万円
・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円
・現在の貯金総額(投資分は含まない):300万円
・現在の投資総額:96万円
・現在の負債総額:0円
高山:ご相談ありがとうございます。結婚すると、自分のお金だけではなく、夫婦での家計管理も考えなくてはいけなくなりますよね。現在のご自身の家計の状況がどうなのかを知るためには、平均値が参考になります。また、夫のお小遣いの決め方を知りたいとのことですが、お小遣いの金額の決め方は悩むところですよね。そこで今回はお小遣いの決め方の方法を中心にお話したいと思います。
2人以上世帯の生活費の平均はどれくらい?
結婚すると、独身の時とは違い、夫婦単位でお金の管理をしていくことになると思いますが、ご相談者さんは新婚さんとのこと。新婚さんの場合、そもそも毎月どれくらいの予算で暮らしていけばいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
もちろん、家族の人数や住むところなどによってバラバラなのですが、参考までに全体の平均を見てみましょう。
総務省統計局「家計調査報告2020年」によると、1世帯あたりの1カ月間の支出の平均は、2人以上の世帯で約27.8万円となっています。内訳は下記の通りです。
・食料:8万198円
・住居:1万7,374円
・光熱、水道:2万1,836円
・家具、家事用品:1万2,708円
・被服及び履物:9,175円
・保健医療:1万4,296円
・交通、通信:3万9,972円
・教育:1万293円
・教養娯楽:2万4,987円
・その他の消費支出:4万7,088円(理美容サービス、小遣い、交際費、仕送り金などが含まれる)
合計:27万7,927円
細かく見てみると、住居費が安いと思うかもしれませんが、これは、持ち家などで住居費がかからない人がいるためです。住宅ローンを支払っている人も含まれていません。ですから、住宅ローンを支払っている場合や賃貸住宅の場合にはさらにお金がかかります。
生活費のほかに、特別費の予算も必要
また、人生にはこの他にもさまざまなライフイベントによる費用がかかります。その上、入院や介護が必要な場合の費用や冠婚葬祭などの特別支出も含まれていないので、その分も予算化する必要があります。
とはいえ、一つの目安にはなると思いますので、夫婦での家計を考えるにあたり参考にしてみてください。私が拝見するところでは、貯蓄も毎月手取り金額の2割以上はしていますし、特に無駄遣いもなく堅実に暮らしていると思います。
月々のお小遣いの平均額はいくら?
現時点の月々の家計の状況については特に問題ないと思いますが、夫のお小遣いの金額をどのようにしたらよいのかは悩むところでしょう。
まずは、世の中の夫のお小遣いの平均額を見てみましょう。
新生グループの調査によると、共働きで子どものいない家庭の場合、男性会社員のお小遣いの平均額は3万6,908円、共働きで子どもがいる家庭の場合は3万2,977円となっています。ダブルインカムで子どもがいない時期は、比較的家計に余裕があるので、お小遣いも高めになっています。(参考:新生銀行グループサラリーマンのお小遣い調査)
ここ数年の会社員の男性のお小遣いの推移を見てみると、月3万円台が多いようですが、私がこれまで受けてきたマネー相談では、共働きで子どもがいないという場合、夫、妻それぞれ5万円程度お小遣いを確保している例も少なくありません。
個人的には、不満を回避するためにも、お小遣いは夫婦ともに余裕を持った金額にするのがよいと思います。
共働き夫婦の家計管理は、「共通の財布型」がおすすめ
お小遣いの金額を具体的に決める前に、お小遣いの金額を決めるにあたっては、そもそも夫婦でどのように家計管理をするのかを考えることが大切です。夫婦の家計管理のパターンはいろいろありますが、お小遣いの不満がでにくく、かつ、お金を貯めやすいのが「共通の財布型」です。
共通の財布型は、夫婦の収入を全額共通のお財布に入れ、そこから固定費や生活費を支払う方法です。貯蓄やお小遣いもすべて共通財布から割り振ります。毎月のお金の流れも貯蓄も「見える化」されているので無駄なくお金がたまりやすい傾向にあります。また、家計が一元化されているので家計管理も簡単です。
「共通の財布型」運営のコツ
ただし、一方に家計管理を任せきりになったり、自由に使えるお金が少なかったりするので、不満を感じやすいというデメリットも。
貯蓄の状況を定期的に確認することができるのであれば、自由度を増やすために、固定費や生活費だけを共通財布に入れて、お小遣いと貯蓄は各自で管理するという方法がいいでしょう。自由度を増やせる方がお互いの記念日にプレゼントを買ったり、食事に行ったりと、ちょっとしたゆとりが出て夫婦円満にはよいかもしれませんね。
また、共通口座への入金の金額は、例えば、夫の手取り収入が30万円、妻が20万円という場合、3:2の割合でだすなど、2人の収入に応じて決めると平等感があります。
お小遣いで支払う範囲を明確にすることがポイント
上記の方法を上手に運用するためには、生活費とお小遣いの範囲を明確にすることが重要です。
ここをきちんと決めていないと、本来お小遣いに含めるべき支出を生活費から支払ってしまったり、生活費から支払うべき支出をお小遣いから支払ってしまったりして、夫婦間でトラブルになってしまう可能性が高くなります。
基本的には住居代や食費、水道光熱費、スマホ・通信費などの絶対に必要な生活費以外は、お小遣いから支払うようにしましょう。
例えば、会社の同僚との飲み会代、趣味代、散髪代などは、ともすると、生活費に含めがちですが、お小遣いから出すようにするとよいでしょう。
このようにすることで、お互いのお小遣いの金額に余裕を持たせることができますし、お互いのお小遣いの範囲内でやりくりできる裁量が増えるので、不満がたまりにくくなります。
手順を踏んだうえで、話し合いを
お小遣いの範囲が明確になったら、今後のライフイベント(車や家の購入費や教育費)のために貯蓄するお金や家計の状況などを考え、実際にお小遣いにどれだけの金額を充てることができるかを計算します。
今回は夫のお小遣いの金額の決め方のご相談ですが、相談者様もお小遣いが必要だと思いますので、まずは、家計全体でどれくらいの金額をお小遣いに充てることができるかを明確にします。
その後、夫婦全体で使えるお小遣いの金額をもとに、お互いにどれくらいの金額をお小遣いとして確保したいのかを夫婦で話し合い金額を決めるとよいでしょう。
お小遣いの金額で揉めるご家庭は少なくありません。今回お話しさせていただいた手順を踏み、お互いに納得してお小遣いの金額を決めることが重要です。ぜひ、話し合ってみてくださいね。