4000万円の住宅が欲しいが、夫はボーナス減で尻込み。世帯年収700万で手が届く?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、33歳、会社員の女性。子どもの小学校入学までに4,000万円の家を購入したい相談者。一方、夫はコロナ禍によるボーナス減や職位の降格などに不安で消極的だそう。希望は現実的なのでしょうか? FPの渡邊裕介氏がお答えします。


コロナ禍でボーナスが減少したこと、また昇格、降格の多い会社であることで、夫が将来に悲観的になっています。

今後降格した場合、現在より100万円程度年収が下がる可能性があるそうです。また会社の業績も良くなく、人員削減の可能性もゼロではないといいます(将来的にどうなるかわからないのはどこの会社も同じだと思うのですが……)。

私は、子どもの小学校入学までに4,000万円前後の家を購入したいのですが、夫はおよび腰です。世帯年収は10年後減少した場合、約700万円程度。4,000万円の住宅購入は無謀でしょうか?また将来に備えて今からできることはあるでしょうか?

【相談者プロフィール】

・相談者:女性、33歳、会社員。手取り月収20万円(子どもが小学校入学まで時短勤務で手取り15万円)

・夫:36歳、会社員。手取り月収28万

・子ども:1人(1歳半、保育園児)

・住居の形態:賃貸(東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:48万円(年間576万円、妻時短勤務時516万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:約170万円(ただし夫はコロナ禍の影響、妻は時短勤務のため、2021年は例年の7割程度)

・毎月の世帯の支出の目安:37万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:9万3,000円

・食費:6万円

・水道光熱費:1万9,000円

・教育費:2万5,000円

・保険料:3万5,000円

・通信費:1万円

・お小遣い:6万円

・その他:雑費(日用品、ペット用品等)4万円、保険料3万5,000円、学資保険2万3,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:6万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):780万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:0円

渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。

コロナ禍の中でのボーナスの減少や、今後の収入の増減を考慮した上での住宅購入のご相談です。ご相談者のご指摘通り、コロナなど外部的な要因も含め、どこの企業も将来どうなるか分からないのが常です。多くの場合、将来への漠然とした不安は、「見えないこと」に対する不安です。安心の住宅購入を実現するためには、ある程度将来の見通しを立てた上で、それに向けた準備や返済計画を立てることです。

ポイントについてみていきましょう。

住宅ローンの基本「返済比率」を知ろう

住宅を購入する際に、返済可能な住宅ローン金額の目安を出すために重要なのが「返済比率」です。

「返済比率」とは、世帯年収に対する住宅ローンの年間返済金額の割合のことです。銀行などの金融機関では、住宅ローンを「借入れ可能な金額」は、この返済比率を、おおよそ30~40%に設定しています。

ご相談者の現在の世帯年収が、手取りから逆算して約860万円程度だと仮定します。すると、【860万/年×35%÷12か月=25万833円/月】となり、月々の返済25万円/月程度まで借入れ可能となります。

ただし、金融機関でローンの審査をする場合には、実際に借入れする際に適用される「適用金利」ではなく「審査金利」が用いられます。審査金利は金融機関によって異なりますが、3.5~4%程度で設定している金融機関が多いと言われています。

「フラット35」の場合は借り入れ可能額が大きくなる

なお、「フラット35」に関しては、適用金利が審査金利となり、借入れ可能な金額が大きくなります。仮にご相談者がフラットで借り入れ可能な金額を試算すると、

借入金額 8,000万円
月々返済額 23万8,340円
適用金利 1.33%(2021年12月時点)
期間 35年

となり、8,000万円近くも借入れ可能と試算できます。ただ、実際8,000万円も借入れするのは現実的ではないですよね。では、「借入れ可能な金額」ではなく「返済可能な金額」を考えてみましょう。

「返済比率」=「返済可能な金額」でないことに注意!

「返済可能な金額」の返済比率の目安は、世帯年収の20~25%程度と考えるといいでしょう。それも、働いて、収入があるであろう期間の65歳までの返済期間で考えると、より安心です。実際に組む際は、35年でもよいですが、65歳以降の返済をどのように行うかについて、退職金の有無も含めて考えておいたほうがいいでしょう。

ご相談者の場合、仮に4年後の40歳で購入、世帯年収が下がってしまった場合で考えると、【700万/年×20~25%÷12か月=11万6,666円/月~14万5,833円/月】となります。すると、

借入金額 3,600万円
適用金利 1.33%(2021年12月時点)
期間 25年
月々返済額 14万1,119円

となります。一般的な返済比率から考えると、3,600万円程度の住宅ローンが適正な範囲内と言えます。もし4,000万円程度の物件を考えるのであれば、諸費用や頭金など含めて600万円程度は準備しておく必要があります。現在、年間で172万円の貯蓄が出来ていますので、4年間で貯められる計算となります。

3600万円を借り入れた場合、教育費は問題ない?

仮に40歳で3,600万円を上記条件で借入れした場合、現在の家賃に対しての負担増が約5万円程度となります。世帯年収が700万円程度になった場合、手取り額は今よりも約50万円程度下がるので、購入後の貯蓄可能額は年間60万円程度と想定されます。

年間60万円の貯蓄が継続出来れば、ざっくりとした計算でも、お子様が中学入学時点で1,200~1,300万円程度の貯蓄が出来ている計算となるので、お子様が一人のままであれば、将来の教育費の備えとしては十分だと思われます。

実際には、お子さまの成長による生活費の上昇なども考慮する必要があります。また、お子さまの教育費も公立なのか私立なのか、老後はどのような生活を送りたいかなど、住宅購入以外の経済的な目標について、整理し優先順位を付けた上でシミュレーションを作成すると、より具体的な見通しを立てることが出来ます。

賃貸と購入の強みを比較して検討を

将来の収入や雇用がどうなるか分からないのは、全ての人に共通します。その中で、賃貸であれば万が一の時に、より家賃の低いところに住み替えることが可能ですが、住宅を購入した場合は、ローンの返済が難しければ、貸すか売るかで対応する必要が出てきます。一方で、賃貸は家賃負担が将来にわたって長く続くのに対して、購入すれば、リフォームなどの支出はあるものの、ローン負担が終われば、その後の負担が軽減されるというメリットもあります。

それぞれのメリット、デメリットを理解した上で、ご自身のライフプランに合った住まいの選び方をしていただければと思います。

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