コロナと連動「していないようでしている」?岸田内閣薄氷の高支持率=2022年1月選挙ドットコム・JX通信社合同調査(米重克洋)

選挙ドットコムとJX通信社は、1月15・16日の両日、定例の合同調査を行った。このうち、電話調査では、岸田文雄内閣の支持率は49.2%(前月比プラス10.6pt)、不支持率は17.6%(同マイナス10.4pt)だった。主に10代から50代までの若い世代の回答が多いネット調査では、支持率は23.8%(同マイナス0.7pt)、不支持率は30.1%(同マイナス5.5pt)だった。

内閣支持率は大幅上昇も、依然多い態度未定層

電話調査では、岸田内閣の支持率が10pt以上の大幅な上昇を見せた。同時に不支持率も10ptほど低下しており、数字の上では減少した不支持がそのまま支持に移ったかのようにも見える。この動きは、近い時期に行われているNHKやJNN、NNNなど他社の調査でも同様であり、結果、岸田内閣の支持率は各社とも高水準となっている。

ただ、前回の調査でも特徴的だった「どちらとも言えない」という回答の多さは、今回もなお際立っている点に注目が必要だ。「どちらとも言えない」とした有権者の割合は33.2%(前回比マイナス0.2pt)で、前回とほぼ同水準だった。このように、内閣を肯定的にも否定的にも評価できない有権者がなお多い点もまた、各社調査に共通する傾向だ。発足から3ヶ月も経てば、政権の評価はある程度定まるのが通例だったが、岸田内閣にはそれは当てはまらない。

ややラディカルな仮説だが、この現象は、政府のコロナ対策について評価を留保する回答が多いことと関係していないだろうか。新型コロナをめぐる岸田政権の対応に関する評価を聞いた設問では、49.6%が「評価する」、19.3%が「評価しない」、31.1%が「どちらとも言えない、わからない」と答えている。やはり否定的な回答は少ないが、安倍・菅両内閣で同様の質問をした結果と比べると中間的な回答の多さが目につく。

内閣支持率・不支持率の推移

岸田内閣のコロナ対応は本当に「評価されている」のか

そもそも、新型コロナウイルスの感染拡大期に内閣支持率が上昇すること自体、安倍内閣や菅内閣では見られなかった現象だ。

2020年4月の最初の拡大期には、安倍内閣の支持率は前の調査から8.9pt下落して33.3%になっていたほか、2021年1月の2度目の緊急事態宣言発令の時期には、菅内閣の支持率は前の調査から5.9pt下落して29.9%になっている。前者の調査では、同時に新型コロナへの政権の対応についての評価を聞いたが、結果は「評価する」が32.9%、「評価しない」が58.3%で否定的評価が大きく上回り、「どちらとも言えない」とした中間的な回答はわずか8.9%だった。

感染拡大初期から指摘してきた通り、ここ2年ほどは内閣支持と政権のコロナ対応に対する評価がかなり連動していた。こうした状況を教訓に「やりすぎの方がまし」として強めの措置をとってきた岸田内閣に対しては、有権者から一定程度の支持が集まっているのが現状だろう。一方、前述の通り岸田内閣のコロナ対応に対して評価が定まっておらず、それゆえ支持とも不支持とも答えない有権者もまだ多い。そのような人々は、新型コロナ感染者数や今後の対応によって、支持にも不支持にも振れ得る層といえる。高支持率の岸田内閣も、やはりコロナ対応において世論から「失敗」と判断されれば、一気に支持を失い得る現状があり、薄氷の上に成り立つ政権とも言えそうだ。

「選挙ブースト」は一段落?立憲と維新がともに支持率下落

政党支持率は自民32.8%(前回比プラス5.0pt)、立憲12.3%(同マイナス0.5pt)、維新9.6%(同2.0pt)で、支持政党がないとする無党派層は31.6%(同マイナス2.3pt)となった。立憲、維新など野党の支持率がわずかながら下落したのに対し、自民の政党支持率が大きく上昇している。

今年夏に行われる参院選の比例区でどの政党の候補者に投票したいかを聞いた質問では、自民32.8%(同プラス7.6pt)、立憲17.7%(同マイナス0.6pt)、維新16.7%(同マイナス6.2pt)などとなった。やはり自民の上昇とあわせて維新の下落が目立つ。

大型国政選挙の前後で政党支持率が大幅に上昇することは、一部で「選挙ブースト」とも呼ばれる。支持する政党のない、いわゆる無党派層が選挙を前に投票先と合わせて支持政党を決めることで生じる現象だが、この現象は当然、選挙が終わると収束していく。12月の前回調査ではまだ立憲や維新など野党の支持率は下落していなかったが、年が明けて「ブースト」が一段落したと見られる。

なお続く立憲と維新の「野党第一党」争い

立憲と維新の「野党第一党」争いはなお続いている。今回の調査では、政党支持率、比例投票先それぞれの絶対的な数字こそ立憲が維新を上回ったものの、無党派層における比例投票先の割合では自民19.2%(前回比プラス5.3pt)、立憲13.4%(同マイナス2.0pt)、維新16.9%(同マイナス5.6pt)となっており、有権者の約3割を占める無党派層において維新がより大きな支持を集める状況は変わっていない。他の定例世論調査を見ても、政党支持率で維新が立憲を上回っているものもまだ多い。このまま維新の「高支持率」が常態化すれば、参院選を前にした有権者の投票態度決定にも一定の影響を与えそうだ。

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