大胆不敵な仕業

 高校の試験中、消しゴムに正答を書き、後ろの席の友人にこっそり渡す。ピアノを弾くような指の動きを机上で示し、この動きならば答えは「A」、これなら「B」と、決めておいたサインを周りに送る…▲5年前、タイで大ヒットした映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」は、成績抜群の女子高校生らが、お金欲しさにカンニングに手を染める話で、手口もいろいろ編み出していく▲やがて不正の舞台は世界規模の一斉入試へと広がり、依頼者に答えを伝える手口は、スマートフォンを使った大胆不敵なものになる。古来、世にカンニングの話は尽きないが、その手口は「世に連れ」らしい▲受験中、見知らぬ人に問題を送信し、答えをすぐさま手に入れる。大学入学共通テストで問題用紙の画像が流出した問題もまた「世に連れ」の例だろう▲出頭した女子学生(19)は、隠し持ったスマホで問題用紙を撮影し、家庭教師の紹介サイトで見つけた大学生に解答を求めたという。全くもって手が込んでいるが、スマホの向こうの、巻き込まれる誰かに思いは及んだか▲その大胆不敵さは映画に並ぶ。理由はどうあれ、巻き込まれた人の心も、他の受験生の努力もないがしろにした仕業は、本人が述べている「魔が差した」では抹消できまい。目は覚めたかどうか。(徹)

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