ダンスで世の中を明るく 長崎の「シアターダンス」30周年記念公演 コロナ休館の施設で開催

休館中の長崎ブリックホールで開催された「シアターダンス」30周年記念公演=同ホール

 長崎市内のダンススタジオ「シアターダンス」の30周年記念公演が23日、長崎ブリックホール(同市茂里町)で行われた。新型コロナウイルスの流行拡大で長崎市に「まん延防止等重点措置」が適用され、公演直前に休館が決定。同スタジオ代表の奥山聖子さんは、突然の休館に戸惑いながらも「中止にはしたくない」という熱意を胸に、感染対策を徹底して公演をやりとげた。
 まぶしいスポットライト、多彩な音楽。国内外のゲストダンサーや同スタジオの生徒が、華やかな衣装をまとって踊る。リズミカルなアルゼンチンタンゴ、優雅な日本舞踊、異国的なベリーダンス、元気なヒップホップなど、異なるジャンルのダンスが次々と披露され、2時間ほどのステージに約70人が登場した。
 同スタジオにとってコロナ禍の中での公演は2020年12月以来2回目。この時は会場の市民会館が開館中だったため、開催できるかどうか気をもむ必要はなかった。今回の公演も、数カ月前から準備を進め、リハーサルを重ねていた。
 だが、コロナ流行の第6波は突然やってきた。奥山さんはリハーサルのために同ホールの鍵を借りに行った際、職員から休館になりそうだという話を聞いた。県が政府に「まん延防止等重点措置」の適用を求め、それが決まる頃だった。
 「今更中止にはできない」。奥山さんはそう思った。ゲストダンサーの1人、アンドレス・サウテルさんは、遠くドイツから今回の公演のために招聘(しょうへい)。2週間の隔離期間を終えていた。他にも一流のゲストダンサーを呼んでいた。
 休館中でも開催するためにはどうしたらよいかを考え、感染防止策を改めてリストアップした。チケットのもぎりはしない、プログラムは観客に手渡さず1席置きに座席に並べる、フィナーレも花束の手渡しもなし、出演者は出番が終わり次第帰宅…。「絶対やりたい」の一心だった。

「コロナのせいで暗く縮こまってしまった世の中をダンスで明るく元気にできれば」と語る奥山聖子さん

 市は休館中の施設でも、チケットが販売済みで延期や中止が困難な催しについては、感染対策を徹底した上で利用を認めている。今回の公演はそれに該当した。感染対策の細部をさらに詰めた上で、何とか当日を迎えた。  約2千人入る大ホールはこの日、空席が目立った。しかし奥山さんにとっては、開催にこぎ着けたことの方が重要だった。閉幕後の楽屋で、奥山さんはこう語った。「こんな状況下で中止せず公演したことについて、批判の声はきっとある。でも、見に来てくれた人には元気を与えることができたはず。暗い世の中を明るくするのが、ダンス、そして芸術の役割だと思う」


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