Bリーグ3部 長崎ヴェルカ首位ターン 前半戦総括 「組織の力」で他を圧倒 あすから後半戦

首位を走る長崎ヴェルカの主力メンバー。組織力で白星を積み重ねてきた=長崎市、県立総合体育館

 バスケットボール男子Bリーグ3部(B3)は16日、2021~22シーズンの前半戦が終了。ここまで26勝2敗で首位の長崎ヴェルカは、31日、2月1日の第17節アウェー横浜戦から後半戦に臨む。今季の目標の「優勝からB2昇格」に向けて順調に進んでいる新規参入クラブの前半戦を振り返る。

■ 「堅守速攻」
 昨年10月2日、鹿児島との開幕戦。前半は動きが硬く、34-38とリードを許したが、後半はしっかり立て直した。90-70でB3初白星を挙げると、そのまま勢いに乗って13連勝。11月28日の第8節アウェー静岡戦、12月25日の第12節ホームA千葉戦で敗れたものの、持ち味の「堅守速攻」で白星を積み重ねてきた。
 最大の強みはチーム力。B3個人成績ランキングのデータが、それを如実に示している。1試合平均得点で上位に名を連ねているのはフォワードのボンズだけ。それも20得点で8位。主力選手が長時間コートに立つのではなく、ベンチメンバーを含めて全員が戦力として出場していることがうかがえる。「個の力」を上回る「組織の力」-。伊藤監督の手腕、選手一人一人の意識の高さがそれを可能にしている。
 結果、チームの平均得点はリーグ1位の99.9。平均失点の73.5も岩手に次いで2番目に少ない。得失点差20点以上のチームはヴェルカだけだ。

B3ヴェルカ前半戦勝敗表

■ 後半の強さ
 伊藤監督はここまで、攻守両面で「とにかく速い」にこだわってきた。「ミスをするなとは絶対に言わなかった」と言う通りに、選手たちは積極的なプレーで他チームを圧倒してきた。
 これを実践するために練習から続けているのが「ポイントファイブ」。ボールを受けた選手が0.5秒以内に次のプレーを判断するという意味で、チーム全員がそれを共有できている。
 失点後の切り替えも速く、数秒のうちにロングパスからシュートを決め返すカウンター、速攻からでも隙があったら狙う3点シュートで攻撃を活性化。他チームは徐々に対応が遅れるようになり、これが後半の強さとなって得点に表れてきた。
 この思い切った攻撃を可能にしているのが、40分間、プレッシャーをかけ続ける「攻めるような守備」。フォワードのボンズやギブスをはじめ、スチール数は1試合平均11.5とリーグ最多を記録している。狩俣、松本らガード陣を中心に、ダブルチームで挟み込んで自滅に追い込むオールコートプレスは、試合の流れを何度も変えてきた。

■ タフになる
 他チームが研究して挑んでくる後半戦の課題は「前半の第1、2クオーターの戦い方」か。他チームと比べて「高さ」がないヴェルカはこれまで、相手が疲れていない前半、インサイド勝負でやや苦しんできた。
 前半戦の2敗は、いずれも外国人センター陣にゴール下を支配され、後半の追い上げが届かなかった試合。首位攻防戦だったA千葉戦は、予想外のテンポの速い攻撃にも出はなをくじかれた。伊藤監督が「プレーの細かなところや地味な部分が、勝ち続けているとできなくなって、結果的に相手を乗せてしまう」と振り返ったように、リバウンドやシュートチェックなどの積み重ねで後手に回ってしまった。
 とはいえ、前半に大きく差を広げられたりしない限りは、しっかりと後半に勝ちきる力を備えているチーム。ここまで故障などによる選手の長期離脱もない。指揮官が「相当タフになる」と気を引き締めているように、ここまで見せている「ひた向きさ」も健在だ。
 「僕たちはB3で優勝することが目的ではない」。共同主将の狩俣の言葉が示すように、チームの目標は発足当初から掲げている「最短でのB1昇格」。そのために、まずはB2への切符を確実に取りにいく。

思い切りのいいプレーでチームに流れを呼び込むガードのタリキ(左)=長崎市、県立総合体育館

◎司令塔として日々成長 ガードのタリキ
 後半戦のカギを握るのが、タリキ、松井、榎田の大卒ルーキー3人。彼らがどれだけ成長できるか。中でも、昨年4月の合同トライアウトでプロ契約を勝ち取ったガードのタリキは注目株。思い切りのいいボール奪取から速攻につなげるなど、守備を中心に存在感を発揮している。
 身長181センチで身体能力が高く、プロ入りを機に大学までのシューティングガードからポイントガードへコンバートされた。まだ経験が浅く、ターンオーバーされる回数やファウルが多いものの、豊富な運動量を生かしてチームに貢献中。エースガードの狩俣に代わって、前半戦は4試合で先発を任された。
 徐々に出場時間を増やしており、前半戦最後のアウェー岐阜戦は20分間出場。9得点8アシスト3スチールの成績を残し、課題のターンオーバーは「0」で終えた。「まだまだ自分の良さを出しながら、チームから求められている部分に応えていきたい」。23歳は現状に満足せず、リーグ優勝に向けて後半戦も走り続ける。


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