【 追う!マイ・カナガワ】コロナ後遺症(中)第5波以降、患者急増 医師が警鐘鳴らす「脳の霧」

後遺症患者の治療にあたる高倉院長=横浜市中区

 「後遺症患者は感染者と違って支援が不十分。療養が終わればそこから先は自己責任なのでしょうか…」。新型コロナウイルスの感染症の後遺症に悩まされる患者からの投稿が「追う! マイ・カナガワ」取材班に寄せられた。後遺症に苦しむ患者と、対応を模索する現場を追った。

 国立国際医療研究センターが昨年10月に公表した調査(回答者457人)では、新型コロナウイルスの感染歴のある4人に1人は後遺症を抱え、10人に1人は発症1年後にも何らかの症状が残っていたという。国内の累計感染者は約260万人(今月29日時点)で、仮にこの調査に当てはめれば、後遺症患者は推計65万人に上ることになる。

 神奈川県内でも多くのかかりつけ医らが後遺症外来を始めており、県は17日に対応可能な県内の医療機関を一覧できるページを開設。その数は120施設に上り、治療を求める患者の多さがうかがえる。

 コロナ禍のさなか、昨年2月に横浜市中区で開院した消化器内科の「アンメッド クリニック 元町」は、開院直後から後遺症外来の受け付けを始めた。

 症状は37度台の微熱のほか、せきや息切れ、胸の痛みや不快感、胃痛や動悸(どうき)、睡眠障害、さらには脱毛など多岐にわたる。発症期間も数週間から数カ月と個人差があり、治療薬もなく対症療法に限られるという。同クリニックでは主に漢方薬を処方しており、高倉一樹院長(45)は「症状は自律神経失調によるものと似ている。一般的な体調不良にも似た症状のため、後遺症と理解してもらえないケースもある」と指摘する。

◆簡単な暗算できず

 昨夏の第5波到来で同院の後遺症患者も急増。5~7月の計26人に対し8~9月は2カ月間だけで192人に上った。

 高倉院長が「他人に理解されにくい症状」として挙げたのが「ブレーンフォグ(脳の霧)」だ。集中力や思考力が落ちる「脳に霧がかかったような」症状で、ある通院患者は仕事復帰したものの簡単な暗算ができずに作業が滞り、上司から「ちゃんと仕事をして」と責められたという。

 新規感染者数が落ち着いていた11~12月も50人近くがかかり、年明け後にオミクロン株の感染が広がったことで、今後も患者が増えることが予想される。

 同院長は後遺症患者のデータを論文にまとめたいといい、「後遺症に対して社会全体で理解を深め、患者を支える必要がある。そのためにも研究を進めることが急務」と訴えた。

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