フェニックスで2日間の公式テストを完了。Next-Gen初年度に向けペナルティ制度も刷新/NASCAR

 2022年のNASCAR最高峰カップシリーズに導入される新規定車両“Next-Gen”モデルのテストが、引き続き1月25~26日のフェニックス・レースウェイで実施され、約1週間後に迫った2月6日のロサンゼルス・コロシアムでのエキシビジョン戦に向け、各陣営が精力的に走行を重ねた。

 シーズンを前にした“実質最後の公式テスト”となったセッションを終え、レーシングイノベーション部門のトップを務めるジョン・プロブストは「Next-Genの新規定により、小規模チームと大規模チーム間のギャップは確実に縮まった」との手応えを述べた。またシリーズは新生カップシリーズのルールブックを更新し、違反に対する「厳しい」罰則規定を設けることをアナウンスしている。

 トヨタ・カムリ、シボレー・カマロ、そしてフォード・マスタングの3車種が集ったアリゾナ州のトラックでは、シリーズの技術部門により制定された「スーパースピードウェイを除くすべてのトラックで、4インチのリヤスポイラーと670馬力の出力トリムを採用する」との決定に従い、旧規定より“ローダウンフォース&ハイパワー”なマシンでの走行が続けられた。

 2020年にカップシリーズのチャンピオンに輝いたチェイス・エリオットは、おなじみヘンドリック・モータースポーツの9号車をドライブしたが、各チームが新規定車両のキーポイントを掴むまで「開幕から最初の6カ月は、大きな変化を経験するだろう」との観測を口にした。

「こういう(フェニックスのような)トラックでは、おそらく誰もが『どのようにクルマを作り、トリムしてもらいたいのか、そしてどんなタイプの空力パッケージを持ちたいのか』が、正確にはわからないと思う」と語ったシボレー陣営のダブルエース。

「そしてこの解決と取引に6カ月を費やし、誰もが行きたい方向のアイデアを持つようになるだろうね。おそらく物事がクローズアップされるのを見るのは、シーズンの後半からだと思うよ」

 同じくヘンドリック・モータースポーツのシボレー・カマロ5号車をドライブする2021年新王者カイル・ラーソンは、チームメイトとは対照的に「火曜に持ち込んだ状態からクルマのバランスには満足した。すぐにレースをしても競争力には自信がある」と、余裕のコメントを残した。

「他のレースカーと同じように、僕らは1年中何かを学び、車内の快適性やどんな小さなことであろうと、物事を微調整し続けるだろう。ブレーキパッケージをさらに良く、さらに強力に……という風にね。だから、そう、僕らはすでにレースの準備ができているように感じるんだ」

Hendrick Motorsports(ヘンドリック・モータースポーツ)の9号車をドライブした2020年カップシリーズ王者のチェイス・エリオット
2021年新王者カイル・ラーソンは「すぐにレースをしても競争力には自信がある」と新規定マシンに好感触を抱いている
バランス確認を繰り返したStewart-Haas Racing(スチュワート-ハース・レーシング)のケビン・ハービック

■厳しいペナルティを備えた「新しい抑止モデル」を制定

 一方、フォード陣営トップチームのチーム・ペンスキーで、22号車フォード・マスタングをドライブするベテラン、ジョーイ・ロガーノは「クルマに必要なことや走り方、スピードなど、すべてが変わったわけじゃない。だから間違いなく“経験”にはつねに利点がある」と、新規定車両の感触を語った。

「昨夜、このクルマのセットアップ方法について話し込んでいたんだ。フェニックスはあくまでフェニックスで(2月20日の開幕戦デイトナでは)別のクルマになるかもしれないが、過去15年間に学んだことは必ずそこにあるはずだ」と続けたロガーノ。

「何もかもがすぐに変わるわけじゃないが、しかし自分自身がもし“新人”になるつもりなら、今がその時だろうね。なぜなら、いくつかのものが少し洗い流されてしまうからね。だから僕は不利な立場にあるとは感じていない。経験の少ないドライバーよりも、確実に有利だと感じているよ」

 そうしたコメントも受け、前出のプロブストは「若いドライバーたちが『レースをするのが待ち切れない』と話すのは素晴らしいこと」だと、新規定導入の効果を口にした。

「初期のシャーロット・テストでは下から数えた方が早いような位置を走っていた小さなチームも、今日最初のプラクティスでは2番手を記録するような勢いを披露した。一方で(差を詰められた)ベテランたちは『なぜ彼らがそこにいる? 最後尾付近にいたはずだろ』という顔をする。良い面もあれば、悪い面もあるだろうね」

 そのNASCARでシニアバイスプレジデント兼チーフレーシングデベロップメントオフィサーを務めるスティーブ・オドネルは、次世代レースカーへの違反に対する罰則に関して「新しい抑止モデル」を制定し、チームは引き続き規則違反に対して、レベルL1~L3の階層化されたシステムのもとでペナルティが課せられることを明らかにした。

「このNext-Gen車両は、トラックでのパフォーマンスと、チーム、ドライバー、ピットクルーの比類のない能力を強調するよう設計された共同プロジェクトでもある。そのデザインに反して走るチームには強いペナルティが課せられ、ファンはドライバーとNASCARに期待される素晴らしいレースに集中することができるだろう」と語ったオドネル。その内訳は、以下のとおりだ。

■2022年NASCARカップシリーズ『Next-Gen規約』違反罰則・改訂版

カテゴリー 内容 罰則

L1 レース後車検・最低重量違反/主要部品規定違反/部品の提出および承認プロセス違反 ・20~75点剥奪(1~10点剥奪/プレーオフ)
・1~3戦のクルーメンバー出場停止(1名)
・25,000~100,000ドル(約290~1150万円)の罰金

L2 Next-Gen指定部品の改造/エンジンシール要件への違反/エンジン制御システムの配線に対する未承認の変更/未承認の車載電子機器の使用 ・75~120点剥奪(10~25点剥奪/プレーオフ)
・4~6戦のクルーメンバー出場停止(1~2名)
・100,000~250,000ドル(約1150~2880万円)の罰金

L3 Next-Gen指定部品の偽造または変更/エンジン違反と性能向上/ECUまたはEFI違反/タイヤまたは燃料の変更/プライベーター・テストポリシー違反 ・120~180点剥奪(25~50点剥奪/プレーオフ)
・6戦のクルーメンバー出場停止(1~2名)
・250,000~500,000ドル(約2880~5760万円)の罰金
・ポストシーズン参加資格剥奪、チームの1レース出場停止(ハイレベル違反が繰り返された場合)

トヨタ陣営のエース、Joe Gibbs Racing(ジョー・ギブス・レーシング)のカイル・ブッシュも周回を重ねた
「経験の少ないドライバーよりも、確実に有利だと感じている」と語ったジョーイ・ロガーノ
カート・ブッシュの僚友となるバッバ・ウォレス。「このクルマはとてもトリッキーだが、最初の5戦で良い対話と関係が築けるだろう」

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