「病床逼迫」に危機感 佐世保県北医療圏 救急受け入れ困難に 一般入院制限も

佐世保市総合医療センターに救急搬送される新型コロナの陽性者。市内では救急搬送の受け入れが断られるケースが増えている=同市平瀬町(画像の一部を加工しています)

 新型コロナウイルスの「第6波」が急拡大する中、佐世保県北医療圏で医療提供体制の逼迫(ひっぱく)が表面化している。確保病床の使用率は1日時点で68%に上り、長崎県内本土の医療圏で最も高い。県北医療の中核を担う佐世保市総合医療センターでは90%に迫り、一般の入院を制限する事態に。市内では感染を懸念し、医療機関が救急搬送の受け入れを断るケースも頻発している。「このままでは医療崩壊に向かう」。現場は強い危機感を抱いている。
 1日、同センターでは医師らが会議を開いた。議題は新型コロナによる入院患者の急増。スタッフが感染したり、濃厚接触者になったりして、人手不足の懸念も続く。こうした問題に対応するため、全ての診療科で入院患者を通常の80%に制限する方針を決定。「このままでは医療体制を維持できなくなる。断腸の思いで判断した」。増﨑英明理事長は苦渋の表情で語った。
 感染の主流となった変異株オミクロン株は重症化しにくいとされる。だが、「これだけ感染者が多くなれば中等症や重症に近い患者は確実に増え、重症化のリスクは高まる。オミクロン株は『軽症で治まる』という間違ったイメージが広がっている」と新型コロナの対策本部長、福田雄一医師は指摘する。
 同センターでは1月11日以降、感染者の受診が1日平均で約12人に上り、多い日は28人にも及ぶ。2月1日時点で確保病床24床のうち、約87.5%に当たる21床が埋まった。
 患者は感染症に対応できる病院で治療を受け、容体が安定した後は療養ができる「後方支援病院」へ移る。ただ、県北では長崎市などと比べ、後方支援病院が少なく、病床確保のサイクルが滞りやすい。県はホテルを宿泊療養施設として提供するが、65歳以上は生活支援も考慮する必要があるため入れず、高齢者の入院が必然的に増えているという。
 一方、感染急拡大に伴い、医療機関が救急搬送の受け入れを断る場面も目立つ。救急医療でも中心的な役割を担う同センターは、3カ所で断られた救急車は原則受け入れる方針を掲げる。通常は、こうした搬送を毎月10件程度受け入れていたが、第6波が本格化した今年1月は50件程度に急増。新型コロナが疑われる発熱や呼吸器異常を訴える患者の受け入れ先が見つからないケースが多く、延べ10カ所以上で断られる場合もあるという。
 増﨑理事長は「コロナの対応で手が回らなくなれば、コロナ以外で、センターが担う(重症・重篤な患者に対する)三次救急の患者を診療できなくなる。救える命を救えない事態が生じる」と危惧。高齢者や肥満の人などは重症化しやすいとし、「多くの人が積極的にワクチンを接種してほしい」と訴える。


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