クプラ“電動大使”エクストロームがXEチーム離脱、代わって“砂漠の王”アル-アティヤが電撃加入

 電動ワンメイクSUVによるオフロード選手権、エクストリームEの“シーズン2”に向け、新型車両(カウル形状)の『Tavascan XE(タヴァスカンXE)』を投入予定のアプト・クプラXEが、電撃的なドライバー体制変更をアナウンスした。

 クプラの“電動アンバサダー”として初年度のチームを牽引したマティアス・エクストロームが離脱し、新たに4度のダカールラリー覇者であるナッサー・アル-アティヤが加入。2001年に同じく女性初のダカール総合優勝を達成したユタ・クラインシュミットとの強力タッグを結成することが発表された。

 シリーズ創設初年度中盤からチームに合流し、エースと4戦でタッグを組んだ“砂漠の女王”は、新しいチームメイトであり最新のダカール・ウイナーでもあるアル-アティヤとのペアリングで、Season 1のチャンピオンシップランキング5位を上回る戦績を目指す環境を手にした。

 このドイツ人とカタール人のベテラン・デュオは、ワンメイク車両『ODYSSEY 21(オデッセイ21)』のボディ形状を残した初年度マシン『e-CUPRA ABT XE1』からスイッチし、2022年は規定で許されるデザイン自由度を活用したタヴァスカンXEをドライブする。

 この印象的なLEDライトを備えたオフロードEVレーシングカーは、将来の『クプラ・タヴァスカン』プロダクション・モデルの設計仕様を最初に垣間見ることが可能なモデルでもある。このCUPRAブランド量産BEV第2弾モデルとなる同車は現在バルセロナで開発されており、2024年にも市場に投入される予定となっている。

 また、チームはこのタヴァスカンXEの持続可能性もアピールしており、ボディカウルは3Dプリンターを用いた天然素材由来のフラックス・ファイバー(亜麻繊維)で成形されており、競技中の修復作業などではさらに柔軟で環境に優しいものになるとしている。

クプラの”電動アンバサダー”として初年度のチームを牽引したマティアス・エクストロームの離脱が決定した
2022年は規定で許されたデザイン自由度を活用した『Tavascan XE(タヴァスカンXE)』を投入する

■「ナッサーのようなダカールスターの加入は素晴らしいモチベーションになる」とクラインシュミット

「この発表を前に、早くも興奮が収まらなかったよ。これは僕にとって素晴らしい経験になると信じている。エクストリームEは、より良い未来に貢献するという野心を持ったエキサイティングなシリーズだからね」と語るのは、2022年ダカールラリーでTOYOTA GAZOO Racingの『GRダカールハイラックスT1+』をドライブし、4度目の総合優勝を獲得したばかりのアル-アティヤ

「僕は今、チームの一員であることを誇りに思ってるし、期待は大きい。アプト・クプラXEとユタ(・クラインシュミット)の経験を活かし、勝利を目指してレースをする決意だよ。新型EVマシンに座って楽しむのが待ち切れない気分だ」

 2006年のPWRCプロダクションWRC王者でもあり、中東出身ドライバーとして初のダカール複数勝利を記録した51歳の“新人”に対し、ペアを組むことが決まったクラインシュミットも「ナッサー(・アル-アティヤ)のようなダカールスターの加入は素晴らしいモチベーションになる」と意気込みを語った。

「昨年、私たちは確固たる基盤を築き、フロントポジションを目指して戦いました。今年の課題は、勝利と複数のトロフィーを獲得する上でさらに一貫性を保つことであり、私たちはその準備ができている」と続けた、総合優勝を含むダカールラリー4度の表彰台獲得経験を持つクラインシュミット。

「オフロードレースへの情熱を、このような素晴らしいチームと共有できて最高の気分。今はただ、シーズンを早く始めたいだけね」

 こうしてダカール伝説のペアでシーズン1の成果をさらに強化することを目指すアプト・クプラXEだが、チームのマネージングパートナーであるアプト・スポーツラインのハンス-ユルゲン・アプトも、強力デュオ結成の決意と覚悟を次のように語っている。

「もちろん、マティアス(・エクストローム)を手放すのは少し悲しいことだ。彼は最初のシーズンに、トラックの内外で我々のチームのために素晴らしい仕事をし、DTMドイツ・ツーリングカー選手権時代を含め20年間に渡って家族の一員だった。それは今後も変わらないだろうが、もちろん我々は彼の優先順位を尊重する」と語ったアプト代表。

「しかし、ユタとナッサーのおかげで、今では非常に強力な新しいチームが結成できた。我々の目標は変わらないし、レースでの勝利とタイトルを目指して戦うだけだよ」

ボディカウルは3Dプリンターを用いた天然素材由来のフラックス・ファイバー(亜麻繊維)で成形される
「ユタとナッサーのおかげで、今では非常に強力な新しいチームが結成できた」とハンス-ユルゲン・アプト代表

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