商店のない「二次離島」 島民のよりどころ閉店 五島 2022長崎知事選 まちの課題点検・5

港で受け取った商品を自宅に持ち帰る桑原さん=五島市伊福貴町

 長崎県五島市の中心、福江島の北東に浮かぶ椛島。1日3便の定期船が到着すると、福江の業者に注文していた商品を引き取る島民が、一人二人と集まってくる。島の南側、伊福貴港近くに住む桑原政枝さん(96)も週1回、食料品などを受け取り、約100メートル離れた自宅まで台車に乗せて持ち帰る。「福江に行かなくても運んでくれるので便利」と桑原さん。ただ、「近くの店が閉まって残念だった」と肩を落とす。
 昨年末、島内唯一の商店「西村商店」が営業をやめた。店主だった西村茂子さん(76)は、1999年に親族から経営を引き継いだ。野菜や精肉、パン、調味料などの食料品のほか、飲料水、日用品を販売。その一方で、福江島のスーパーなど小売2業者が、それぞれ住民から注文を受けて定期船に預けるサービスを開始した。それでも西村商店は、急を要したり、不足したりしたものが購入できる、島民のよりどころとして親しまれてきた。
 だが、人口減少とともに売り上げは低迷。西村さんは続けたい気持ちがあったが、閉店を決めた。「これも時代でしょうか」とつぶやく。仕入れ品の港からの搬入を手伝ってくれるなどした住民のサポートに感謝している。
 人口減少に悩む離島で、とりわけ、本土とは直接の航路がない二次離島は人口減が著しい。イワシ漁が活況だった70年前に3千人以上が暮らしていた椛島の人口は現在、69世帯96人。この5年余りでも30世帯約50人減り、65歳以上の高齢化率は6割を超える。基幹産業の漁業は、燃油の高騰や魚価の低迷が長期化。島を離れる人が増えたという。
 椛島沖では、浮体式洋上風力発電の国の実証実験が約10年前に実施され、地元では活性化の期待も膨らんだが、市内の別の海域に移転。県は同市と漁業研修生の受け入れなど、振興策に取り組んでいるが、定住者が増えるなど歯止めがかかるまでには至っていない。
 奈留島や久賀島、嵯峨島など市内の他の二次離島もこの約5年で、それぞれ島民の1割以上が減少するなど、福江島と比べても厳しい現実が横たわる。高齢化、新型コロナウイルスの影響が重なり、商業者の撤退など課題が浮き彫りになっている。
 釣り客に人気で、弘法大師が登ったと言い伝えがある断崖などスポットもある椛島。島で生まれ育ち、今も暮らす男性(63)は「若い人が移り住んで暮らすのは難しい。政治に求めても難しいのか。それでも隅々に目を配ってほしい」と語る。  


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