ガソリン高騰で激変緩和 長崎県内実感乏しく 消費者不満、板挟みの小売店

燃料油価格抑制の仕組み

 ガソリン高騰を受け国は先月27日、石油元売り事業者に補助金を出し、レギュラーガソリンの全国平均小売価格を170円程度に抑える燃料油価格の激変緩和対策事業を初めて発動した。しかし、もともと170円を上回り全国平均との差が大きい長崎県では、発動から1週間が経過しても効果の実感が乏しい。「小売店への補助ではない。『値下がり』と報道されて消費者は誤解し、風評被害だ」。長崎市内の複数の小売店は消費者との板挟みに頭を抱える。
 「なぜ170円に値下がりしていないのか」。市内の小売店には先月末以降、こんな消費者の声が相次ぐ。担当者は「国はもっと分かりやすく説明してくれないと困る」と嘆く。
 背景に同事業の難解さがある。1月24日時点の全国平均が170円20銭となり、国は発動基準に定めた170円との差額と前週からの原油価格の上昇分を合わせた1リットル当たり3円40銭を補助すると発表した。
 これ以降、「3円40銭」の数字が“独り歩き”し、市内の小売店に値下げの問い合わせが相次ぐ。制度上、小売価格に直結せず全国一律170円程度ではないと説明するが、問い合わせはやまない。
 ガソリン価格は、元売りが産油国から原油を輸入して製油所で精製し、これらの費用に物流費や税金などを上乗せした卸売価格を毎週決めて小売店に卸す。小売価格は小売店それぞれの判断。離島が多い本県は油槽所からの距離が遠く、輸送費がかかる上、小売店当たりの販売量が少ないなどの事情があり、全国でも高値が続く地域の一つ。
 同事業が発動されても、全国的に小売価格の抑制には時間を要する。発動後初の調査となった1月31日時点の全国平均は、前週比70銭高い170円90銭。元売りに3円40銭を補助しても、抑制効果は2円50銭にとどまった。本県は、前週比90銭高い178円40銭の全国最高値。別の小売店担当者は「補助金効果の実感はない。ガソリン税率の引き下げの方が、お客さまのためになるのではないか」と話す。
 効果が実感されない背景に、元売りが決める卸売価格の上昇がある。市内の小売店によると、卸売価格は1月だけで1リットル当たり計11円50銭上昇。元売りへの補助金が出ても、2月3日分の卸売価格は原油価格の上昇に伴い、前週と比べて1円20銭上がった。

国の激変緩和対策が発動された後、もともと小売価格が高い本県の小売店では混乱が続いている=長崎市内

 市内の小売店経営者は「原油価格が予想以上に値上がりし、補助金で補えず、卸売価格が上がっていることが消費者に知られていない。消費者は小売価格の値下がりを期待しているので、これまでの卸売価格の上昇分を小売価格に転嫁して値上げはできない」と苦しい胸の内を明かす。同事業の期限である3月末以降も原油価格の高騰が予想され、消費者が恩恵を受けやすい税率軽減などの根本的な対策を求める。


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