空洞化する商店街 活性化へ官民の試行錯誤続く 島原 2022長崎知事選 まちの課題点検・7

空き店舗が増え、人通りがまばらとなったアーケード街=島原市堀町

 空き店舗や更地なら、まだまし。住宅や駐車場ばかりになれば、車の止め方などを巡るトラブルが心配だし、そもそも商店街の魅力が薄れてしまう-。
 島原市の中堀町商店街協同組合の鹿田信雄理事長(68)のため息は深い。
 同商店街周辺では近年、廃業した店が賃貸物件や福祉施設などに建て替えられ、日中の乗り入れが原則制限されている車の通行が増加。買い物客から敬遠される新たな要因となっている。
 同市中心部には、アーケード街を含め六つの商店街がある。人口が減り、どこも人通りはまばら。かつては「島原半島中から客が集まった」が、雲仙・普賢岳噴火災害や島原鉄道南線の廃止なども影響し、往時のにぎわいはない。
 市商工振興課によると、6商店街の会員数は2013年の計189から年々減少し、21年は計156。1982年度、1日平均約4万人だった商店街の通行量も、本年度は10分の1以下の約3800人にまで落ち込んだ。アーケード近くで飲食店を営む松本望生さん(31)がぼやく。「アーケードは店がつぶれまくっていて暗く、活気がない。せめて若い人が楽しめる施設ができれば」
 車社会の到来に伴い買い物客が郊外型店舗に流れ、地元商店街が空洞化しているのは全国共通の課題だ。島原でも、対岸の熊本などに客が流れる「ストロー効果」もあり、苦戦が続く。ただ好材料がないわけでもない。今春予定されるイオン島原ショッピングセンターの再オープンだ。

今春の再オープンに向け、建設が進むイオン島原ショッピングセンター=島原市弁天町1丁目

 同店は中心市街地の中核商業施設。前身から数えて半世紀近く、商店街と共に市民生活を支えてきたが、建て替えに伴い2020年5月末で営業終了した。高齢化の進展で今後、郊外の店舗に気軽に足を運べないお年寄りが増える。こうした買い物弱者を支える意味でも、再オープンは商店街再興の起爆剤と期待される。
 「ただ」と島原中心市街地街づくり推進協議会の隈部政博会長(79)はくぎを刺す。「話題性はあるが、商店街が自ら考え行動しないと意味がない」。その言葉に呼応するように、アーケード内では再オープンに合わせ、店舗の改築を進める動きも徐々にではあるが出てきているという。
 プラスアルファの動きもある。市は、中心部に残る古い町家の一つ、旧堀部家住宅を、休暇先でテレワークをするワーケーション対応の滞在型施設に改修中。新年度、運営を始める予定だ。地元企業が付近の古民家2棟を購入し活用する動きも水面下で進む。
 活性化に向け、官民の試行錯誤が続く。鹿田理事長は「交通アクセスや道路の問題などは『自力』ではどうすることもできない。行政のさらなる協力が必要だ」と話す。


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