高校の存続 「島に2校」選択肢の重要さ 新上五島 2022長崎知事選 まちの課題点検・8

模擬会社運営を学習する生徒ら=新上五島町、中五島高

 「兄は上五島高に通いました。けれど私は商業を勉強したくて中五島高を選びました。ビジネスキャリアコースで学んだことが実戦力になって、勤務先でも『役立っている』と言われてうれしいです。商業系がある中五島高がもし無くなると、若者の流出につながるのではないでしょうか」
 昨年春、中五島高を卒業し、製麺店事務として働く青崎愛梨さん(19)=新上五島町七目郷=は心配げに話す。
 同町には長崎県立高の上五島高(浦桑郷、古賀巖校長、280人)と、中五島高(宿ノ浦郷、岡田一幸校長、74人)がある。しかし町内は人口減、高齢化が進み、入学者数も減少傾向。両校の存続と今後について町民の関心は高い。

 2021年度の入学者数は上五島高103人(募集定員160)、中五島高30人(同40)。中五島高は、上五島高と連携しながら教育水準を維持するキャンパス校だ。18年、商業科募集停止を機に、普通科1クラスにアカデミックキャリア、ビジネスキャリアの2コースを設けた。
 アカデミック-は国公立大への進学、ビジネス-は私立大、専門学校、就職が目標。中でもビジネス-の学習は特徴的。地域貢献を目指して生徒らが設立した模擬会社で地元産品を使った商品開発に取り組むほか、販売実習、利益を高齢者施設に還元するなど、商業系の教育、実践に力を入れている。
 入学者数は募集定員の半数を上回ってはいるが、このまま減り続けると廃校の懸念も拭えない。現時点で具体的に検討されているわけではないが、地元には危機感がある。「廃校の検討対象になってしまったら、決定ありきの話でしか地元に説明はない」と警戒する人は少なくない。
 中五島高PTA顧問を務める浦桑郷の宮﨑和也さん(56)は「中五島高は小規模校のハンディをメリットに変え、行き届いた教育を実践している。統廃合は地域の活性化にも逆行する。人口減少の時代に合わせた高校存続の基準を考えてほしい」と話す。
 地域に目を向け、自分が何をできるかを考え、将来を見据える生徒を育てる教育を進める中五島高。進学、就職で島を離れる生徒もいるが、岡田校長は「『島を出ていく力、戻ってくる力』を身に付けさせたい」と話す。それが地域貢献につながると信じている。

中五島高の校舎=新上五島町

 一方、上五島高普通科は、地域の課題を探る密着型の学習に力を入れている。また電気情報科は例年、在校中に大半が電気工事士の国家資格を取得するなどの実績がある。
 特色ある2校が島に存在することで、子どもたちには選択肢がある。それはとても重要なことだ。宮﨑さんは「県には地域の特性や離島教育の現状を知ってほしい。頑張っている姿や良さを、自ら足を運んで確かめ判断してくれるような知事を望みたい」と語った。


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