コロナ禍 続く「部活動」制限 工夫を凝らして自主練 競技力低下への懸念も

コロナ禍の影響で制限が続く部活動。目標への計画的な練習が難しい中、選手たちは地道に心技体を磨いている(写真はイメージ)

 コロナ禍で各校の運動部活動が断続的に制限され、選手や指導者が「練習をできない日々」に苦しんでいる。長崎県は現在、県立学校に対して13日まで約2週間の活動中止を通達中。2020年3月以降、公式戦への準備や特定の条件を除いて部活動がストップするのは今回で4度目で、合計日数は80日を超える。他校との交流停止なども含めると、その制限日数はさらに増える。とりわけ進路など将来への影響も大きいのが高校。選手たちは「やるせなさ」を募らせながらも懸命に心技体を磨いている。

 ■否定的な目

 「人間、甘い環境に慣れたら戻るのが大変。こんな状況でも妥協せず踏ん張れるかどうかは指導者も一緒」。こう話すのは屋外球技の監督。活動中止が期末テスト期間と重なっている学校もあり、一定割り切ることはできるが「延長となれば、いよいよきつい。自主練でも周囲の“何かやってるぞ”という否定的な目もある」と時間制限などの緩和を願う。
 春の各種大会も目前。九州や全国大会出場校は大会の約3週間前から必要最少人数で平日約2時間、自校で活動ができるが、ある屋内競技の指導者は「調整にすぎない。常に対策はしているが、全体の感染者数が増えたら中止の繰り返し。プロスポーツや大人の試合は有観客でもやっている。現場の感覚では矛盾と思えることもたくさんある」と指摘する。

 ■他県との差

 県にとっても「苦渋の決断」だが、他県とは差もある。九州各県教委などによると、今回の感染「第6波」で、早い段階から公立の部活動を原則中止にしたのは、沖縄(現在は宮古地区を除く)、熊本、長崎、宮崎の4県。まん延防止等重点措置が適用されている中でも、福岡(7日から中止)、佐賀、大分、鹿児島各県は他校との交流中止や時間短縮、地区別などの制限はあるものの、全県的に完全ストップにはならなかった。
 個人の時間が大幅に増えて自主性がより求められる中、初心者が多い競技には「そもそも」の問題もある。県高体連ボート専門部の溝上貴稔委員長は「(艇に)乗らないと話にならない。競技人口も少ないので、他校も含めた練習会が毎年の強みだが、それができないのはダメージ。やるべきことをやるべき時期にやらないと後々響いてくる」と競技力低下も懸念する。
 カヌー専門部の西川和昭委員長も同様の不安を口にした上で「(カヌーをしてほしい)小中学生とのつながりも減る。屋外の水上で人との距離も保てるけれど…」。同じくカヌーで五輪出場経験もある西陵高の西夏樹監督は「このオフシーズンの陸上トレーニングで力が上がっていただけに、選手には何ができるのか考えてと言い続けている。ただ、今は体育の授業の実技もできない」。

 ■今を大事に

 寮生同士でコミュニケーションを図れるチームもある一方、大半は自宅生で工夫を凝らすしかないのが現状。そんな中、島原工高レスリング部は選手間でメニューを共有して、場所は違っても「同じ時間に一丸」で“合同練習”を続けている。アプリを活用し、試合中の心理面などに関して指導者と質問、回答を繰り返したり、動画を送って助言を求めたりするチームもある。
 だが、そのような状況がいつまでも続くようであれば、心と体の成長を追求する運動部活動は成り立たない。県はまん延防止等重点措置の延長を国に要請しており、感染防止対策をしながら、計画的に、控えめに練習するしかないという難しさは続く。
 県高体連の後藤慶太会長は「出口のないトンネルはない。必ず光はあると思う。そこを信じて、今やるべきことは何かを考えて、今を大事にしてほしい」と話している。


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