アウグスト・ファーフスがLMP2に初挑戦「チームのイメージを変えたい」。BMWのLMDh参入とは“無関係”

 先日、2022年のスーパーGT・GT300クラスにBMW Team Studieから参戦することが発表されたBMWのファクトリー・ドライバー、アウグスト・ファーフス。この日本でのプログラムと並行し、ファーフスはプロトタイプ車両でのレースに初挑戦する。ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズにおいて、BHKモータースポーツのオレカ07・ギブソンをドライブするのだ。

 ファーフスはこの挑戦が「楽しみ」であると語っている。

■速さはクラス1車両で経験済みのため「問題ない」

 イタリア北西部のトリノ近郊に拠点を置くイギリス籍登録のBHKは、元インディカー・ドライバーのフランチェスコ・ドラコーネがオーナーを務める。チームは今季のELMS・LMP2クラス参戦ドライバー、およびLMP3のドライバーコーチとして、ファーフスと契約したことを2022年1月に発表している。

 BHKモータースポーツは2018年にLMP3クラスでELMSにデビューし、翌年からはLMP2へとステップアップ。これまでのベストリザルトは2020年最終戦の8位と苦戦するなか、ELMSのトップカテゴリーで4年目のシーズンを迎えようとしている。

 モナコ在住のファーフスは、チームの拠点との近さもあり、ドラコーネとは「常に少し連絡を取り合っていた」という。また今回の起用にあたっては、ドラコーネからオファーがあったと語っている。

「昨年相談を始めたとき、チームは“ゲームチェンジ”をする必要があるとドラコーネは話していた」とファーフス。

「僕はチームに加わりたいと伝えたが、いくつかの重要な構造変更が必要だった。真新しいチームとはいえ、ここまでは期待をかなり下回る成績しか残せてきていない」

「詳細な裏事情をすべて説明することはできないけど、僕らは良い準備を進めており、ELMSを“無意味にただ転戦するだけ”になるのは避けたいと思っている。チームを良いレベルにまで引き上げたい」

「最初のレースで勝つとまでは言えないが、そこでこのチームのイメージを変えることは明確な目標だ」

「僕はチャレンジが好きだ。僕にとってはLMP2車両をドライブするということも重要だし、それを楽しみにしている。僕は(クラス1規定の)ターボエンジン時代にDTMのテストをした。LMP2と同じスピードの車両だ。だから、速さという点は問題ない。異なるタイプの耐久レースにトライするのは良いことだ」

■スーパーGTと日程が重複する開幕戦ではELMSを優先か

 参戦プログラムにLMP2のレースが追加されたことにより、ファーフスは「極めて忙しい」シーズンに向け、照準を合わせている。

 38歳のファーフスはすでに発表されているGT300でのプログラムのほか、BMW MモータースポーツがM4 GT3の世界的なロールアウトをサポートすることから、他のシリーズでもドライブが予定されている。

 なおELMSのカレンダースーパーGTのカレンダーには、ふたつの週末で日程のバッティングがある。日本が非居住者の入国に制限を設けていることから、ファーフスは開幕戦の日程重複においてはELMS参戦を優先するつもりであると理解されている。

1月のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権開幕戦のデイトナ24時間レースにも、M4 GT3で出場したファーフス

「僕はBMWプロジェクトの一員であり、この新しいM4 GT3でカスタマーをサポートしたいと思っている」とファーフス。

「超ハイレベルなプロチームだけがこのクルマを走らせるわけではない点を考慮する必要がある。小規模なチームもあるし、経験のある人間の助けを借りることは、彼らにとって価値があることだ」

「今年はたくさんのレースがある。すべてがうまくいけば、25もの週末、僕はレースをすることになるだろう」

 ファーフスはまた、BMWが2023年のデビューに向けLMDh車両を開発しているタイミングで自身がLMP2に初参戦することについては、“偶然”であると述べている。

 GTやフォーミュラ界の著名なドライバーの何人かは、WEC世界耐久選手権のハイパーカークラス、あるいはIMSAのGTPクラスへの将来の参戦を視野に、LMP2で経験を重ねることを模索している。

 ファーフスは2018年と2019年にLMP2クラスのチームからル・マン24時間レース参戦の打診を受けたと述べているが、いずれの年もLMPGTEプロクラスでBMWチームMTEKのファクトリープログラムに参加することを選択していた。

「これまでLMP2にトライしようとしてこなかったわけではない。今回、いいタイミングに巡り合ったんだ」とファーフスは言う。

「適切な組み合わせと、適切なチームを見つけることは常に困難だった。なぜなら、本当に多くのチームが(持ち込み)予算を必要としているからだ」

「もしBMW(ドライバー)の誰かが『LMDhをドライブする』と言ったら、彼は嘘をついていることになる。なぜなら、まだ誰も(参戦ドライバーを)知らないはずだからだ。もちろん、誰もがBMWのLMDhプログラムに関わりたいと思っている。僕がそれについて『ノー』というのは、嘘をついていることになる」

「だけど、『LMP2をドライブしたら、将来LMDhをドライブする』というのが(今回のLMP2参戦の)決定的な要因ではない」

BMWが公開しているBMW M LMDhのイメージ

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