平和教育のシンボルに 「嘉代子桜」苗木を植樹 対馬・佐須奈小中 

対馬市立佐須奈小、中の校庭に「嘉代子桜」を植樹した生徒児童ら=同市上県町

 長崎原爆で亡くなった林嘉代子さん=当時(15)=をしのぶ長崎市立城山小の「嘉代子桜」の苗木が、遠く離れた対馬市上県町の市立佐須奈小、中学校(浦田武校長、71人)の校庭に9日植樹された。同校は「平和教育のシンボルにしていきたい」としている。
 学徒報国隊員として派遣されていた旧城山国民学校(現・城山小)で被爆死した嘉代子さんの母・津恵さんが1949年、嘉代子さんが好きだったソメイヨシノの苗木を同校へ贈り、約50本が植樹された。現在も6本が残る。
 次世代に嘉代子桜を引き継ごうと、同校の同窓会などでつくる「城山小原爆殉難者慰霊会」が、接ぎ木して育てた苗木を県内外の学校などに提供しており、対馬市のボランティア団体「もやいの会 佐須奈」(日髙光博代表)が3本の苗木を譲り受けた。
 佐須奈小、中にはうち1本を植樹。9日は同会のメンバーや児童生徒、教職員らが校庭に集まり、苗木に肥料、水を与えて土をかぶせた後、イノシシやシカの食害を防ぐネットを周囲に張った。残りの苗木は、同会が上県町の地域福祉センターと、厳原町の県指定史跡「対馬藩お船江跡」に1本ずつ植樹した。
 日髙代表(77)は「早ければ来年にも咲くだろう。植樹を通して、対馬でも嘉代子桜の存在が知れ渡ってほしい」。卒業後は島外に進学する中学3年の糸瀬陽菜さん(15)は「嘉代子桜は学校の授業で習ったことがあった。たくさんの人が『平和っていいな』と思えるような桜を咲かせてほしい」と話した。

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