「3人目の先発要員」「クローザー」…DeNA昨季最下位→大逆転Vの条件とは?

DeNA・三浦大輔監督【写真:荒川祐史】

強力打線は昨季も3割打者4人、あとはリーグワーストの投手陣

昨季はヤクルトが前年までの2年連続最下位からリーグ優勝、日本一まで一気に駆け上がった。今年も昨季最下位のDeNAに、投手陣の奮起次第で急上昇の気配がある。現役時代に横浜(現DeNA)、ヤクルトなど4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、躍進への鍵を探った。

昨季のDeNAは最終的に、プロ1年目の牧を筆頭に3割打者を4人輩出。規定打席にわずか4打席足りなかったオースティンも.303をマークし、打線は大いに猛威を振るった。となると今季の浮沈は、昨季のチーム防御率がリーグワーストの4.15に終わった投手陣が握っているが、上がり目は十分ある。

沖縄・宜野湾キャンプ中の13日には、実戦形式の「ケース打撃」が行われ、先発ローテの軸として期待される今永昇太投手、大貫晋一投手が相次いで登板し、いずれも好投した。取材した野口氏は「2人に関しては全く心配がない。あとは3人目以降の先発要員が課題」と話す。今永は昨年、左肩クリーニング手術を受けた影響で出遅れ5勝(5敗)に終わったが、今年は本格的なエース復活を見込まれている。大貫も好不調の波が激しかったものの、2年連続チーム勝ち頭となる6勝(7敗)を挙げた。

「3人目」の筆頭候補は、5年目の東克樹投手だろう。一昨年2月に左肘のトミー・ジョン手術を受け、昨年9月28日にようやく1軍復帰。3試合で1勝2敗、防御率2.29をマークした。プロ1年目の2018年に11勝を挙げ新人王に輝いた実力を発揮すれば、「今永、大貫、東の3人で40勝してもおかしくない」と野口氏は見ている。今永、東に加えて石田健大投手、浜口遥大投手、坂本裕哉投手あたりが1年間先発ローテを守れば、空前の“左腕王国”が成立することにもなる。

「クローザー最適任はエスコバー」の見解も、実現は未知数…

そして1年目から活躍する可能性があるのが、ドラフト1位の小園健太投手である。高卒ルーキーながら1軍キャンプに抜擢され、13日には初めてブルペン入り。捕手を座らせ全てストレートの16球を投じた。「上半身はまだ少し頼りないが、下半身はがっしりしていた。尻周りと太ももは細くない。スタンス幅が狭めの投球フォームは、ヤクルトの奥川をほうふつとさせる」と野口氏。「いずれは球界の宝になりうる。首脳陣は今季中に使いたくなるかもしれないが、無理をさせず、シーズン終盤に何試合か登板できればいいのではないか」と指摘した。

先発ローテの充実同様、クローザーの人選も避けては通れない。昨季は実績のある三嶋一輝投手、山崎康晃投手、さらには伊勢大夢投手が起用され、いずれもシーズンを通して役割を全うすることはできなかった。今年は白紙の状態からのスタートとなる。

ちなみに、野口氏の見解では「クローザーに最も向いているのはエスコバー」。最速163キロを誇る左腕で「適度に制球も荒れるから、他球団の打者が一番嫌がっている」というのがその理由だ。「唯一のネックは、クローザーとなると登板数が減る可能性が高いこと。本人は典型的な“投げたがり”で、60試合以上投げてもケロッとしているが、登板間隔が空いた時に調子が狂う恐れがある」とも。驚異的なスタミナがかえって守護神定着を阻んでいるとすれば、なんとも皮肉だ。「伊勢もストレートの威力だけなら、十分クローザーの適性があると思うが、トータルではクエスチョンマークが付く。ウイニングショットになりうる変化球を1つ、ないし2つ習得する必要がある」と付け加えた。

また、9回打ち切りだった昨年と違い、最大で延長12回まで行われる今季は「中継ぎ陣の層を厚くしたい」と野口氏が言うのもうなずける。「伊勢、エスコバー、山崎、三嶋を使い切り、それでも試合の決着がつかなかった場合、こらえ切れる投手がいるかどうかは非常に重要」(野口氏)となる。砂田毅樹投手が58試合に登板した昨年並みに働き、田中健二朗投手、三上朋也投手が復活すれば、おあつらえ向きだ。

「3人目以降の先発」、「シーズンを通して任せられるクローザー」、「豊富な中継ぎ陣」が揃った時、奇跡への条件は整う。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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